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2018 年度 実績報告書

PD-1シグナル阻害によるTregの免疫抑制解除と抗腫瘍免疫活性化の機序解明

研究課題

研究課題/領域番号 16H06149
研究機関京都大学

研究代表者

茶本 健司  京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (50447041)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワードがん免疫 / 体液性免疫 / B細胞 / 腸内細菌
研究実績の概要

悪性黒色腫の治療薬として昨年認可された免疫チェックポイントの阻害抗体は、我が国発の画期的免疫治療薬である。 従来開発されてきたがん免疫治療と比較すると、臨床試験での奏功率は約30-50%と劇的に向上したが、約半数の患者には依然大きな治療効果は見られない。なぜ抗PD-1抗体治療に不応答な患者がいるのか、その原因を解明するためには、なぜ抗PD-1抗体治療で癌が治るのか解明する必要がある。PD-1阻害時に担癌生体内で活性化する免疫機構として細胞性免疫と体液性免疫が挙げられるが、その詳細は不明点が多い。本研究では、細胞性免疫におけるがん反応性キラーT細胞と Tregの制御関係、体液性免疫におけるB細胞を介した抗体免疫について追求する。
これまでの研究により、B細胞を欠損するマウスでは細胞性免疫を介した抗腫瘍効果が高くなることが明らかになった。現在このモデルを用いて、PD-1阻害による細胞性免疫/体液性免疫を介した抗腫瘍免疫増強メカニズムを総合的に追求している。とくにgerm freeのB細胞欠損マウスでは抗腫瘍増強効果が減弱したので、B欠損が腸内細菌の異常をきたし、細胞性免疫のがん免疫力を強化していることが明らかになってきた。今後は、B細胞(IgA欠損)による腸内細菌異常がと細胞性免疫の関与について、T細胞のsingle cell解析や、germ freeモデルを用いて、分子メカニズムをさらに詳細に解析する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

PD-1阻害時における細胞性免疫/体液性免疫の抗腫瘍免疫における影響は不明点が多い。昨年に引き続き、キラーT細胞、Treg、B細胞と抗体を中心に細胞性免疫/体液性免疫を介した抗腫瘍免疫増強メカニズムを総合的に検討した。
1)Foxp3-GFP CREKI ROSA26-RFPKIマウスを用いた解析
昨年から行っているFoxp3-GFP CREKI ROSA26-RFPKIとの交配が完了した。今後このマウスにおける抗腫瘍免疫力の解析を行う。本マウスを用いることでFoxp3+の細胞上に発現するPD-1の意義を明確にすることができる。コントロールとしてCD4-Cre, CD8-Cre, B-Creとの交配の準備を進めている。
2)細胞性免疫/体液性免疫増強メカニズムを行うための基礎検討解析
AID-/-マウスやuMT-/-マウスのようにIgAを欠損したマウスでは抗腫瘍効果の増強が認められた。これらの高い抗腫瘍効果にはIgA産生の違いによる腸内細菌異常が原因である可能性が高い。そこで、腸内細菌のいないgerm free AID-/-マウスやuMT-/-マウスを作成し、抗腫瘍効果を検討したところ、これらの高い抗腫瘍効果は大きく減弱した。また、この増強効果にはType I IFNが重要である可能性を示唆する結果も得られている。
B細胞欠損マウスで抗腫瘍効果が増強するのは予想外の結果ではあったが、これらの解析は本研究の意義に合致しており、全体としておおむね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

これまでの解析で、腸内細菌刺激が全身の自然免疫サイトカインを誘導し、それが抗腫瘍効果の増強を促していることが徐々に明らかになってきた。しかし、これら一連のB細胞欠損マウスにおける腸内細菌の差がどのように抗腫瘍効果に影響を与えるのかメカニズムは不明である。今後は、AID-/-, uMT-/-マウスを用いて末梢T細胞のsingle cell analysisや、免疫学的・分子生物学的アッセイを行い、体液性免疫と細胞性免疫のクロストークを分子的に明らかにする。またgerm freeのAID-/-, uMT-/-マウスモデルをもちいて、腸内細菌がどのようにB細胞欠損マウスの抗腫瘍力に寄与しているかさらに詳細に検討する。

  • 研究成果

    (30件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 4件、 招待講演 7件) 図書 (13件) 備考 (1件) 産業財産権 (2件) (うち外国 1件)

  • [雑誌論文] VISTA expressed in tumour cells regulates T cell function.2019

    • 著者名/発表者名
      Mulati K, Hamanishi J, Matsumura N, Chamoto K, Mise N, Abiko K, Baba T, Yamaguchi K, Horikawa N, Murakami R, Taki M, Budiman K, Zeng X, Hosoe Y, Azuma M, Konishi I, Mandai M.
    • 雑誌名

      Br J Cancer

      巻: 120 ページ: 115-127

    • DOI

      10.1038/s41416-018-0313-5

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Combination therapy strategies for improving PD-1 blockade efficacy: A new era in cancer immunotherapy.2018

    • 著者名/発表者名
      Chowdhury PS*, Chamoto K* (*equally contributed), Honjo T.
    • 雑誌名

      J Intern Med.

      巻: 283 ページ: 110-120

    • DOI

      10.1111/joim.12708

    • 査読あり
  • [雑誌論文] PPAR-induced fatty acid oxidation in T cells increases the number of tumor-reactive CD8+ T cells and facilitates anti*****PD-1 therapy.2018

    • 著者名/発表者名
      Chowdhury PS*, Chamoto K* (*equally contributed), Kumar A, Honjo T.
    • 雑誌名

      Cancer Immunol Res

      巻: 6 ページ: 1375-1387

    • DOI

      doi: 10.1158/2326-6066

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] PD-1阻害がん免疫治療法のおける免疫代謝の役割2019

    • 著者名/発表者名
      茶本健司
    • 学会等名
      北海道大学部局横断シンポジウム、札幌、2019年1月25日
    • 招待講演
  • [学会発表] 脂質代謝制御によるPD-1阻害がん免疫治療の増強効果とその機序解明2018

    • 著者名/発表者名
      茶本健司
    • 学会等名
      第55回日本臨床分子医学会学術集会、京都 4月12日
    • 招待講演
  • [学会発表] Mitochondrial manipulation improves PD-1 blockade immunotherapy.2018

    • 著者名/発表者名
      Chamoto K, Honjo T.
    • 学会等名
      2nd International NTNU Symposium on Current and Future Clinical Biomarkers of Cancer. June 14th-15th, Trondheim, Norway.
    • 国際学会
  • [学会発表] Modulation of fatty acid oxidation in T cells improves the PD-1 blockade therapy.2018

    • 著者名/発表者名
      Chamoto K, Honjo T.
    • 学会等名
      第45回内藤コンファレンス がん免疫治療法の免疫分子基盤-次世代のがん免疫療法をめざして、札幌 6月28日
    • 国際学会
  • [学会発表] 免疫チェックポイント阻害薬の臨床における問題点とその取り組み:基礎と臨床は如何にして融合すべきか?2018

    • 著者名/発表者名
      茶本健司
    • 学会等名
      第6回日本臨床腫瘍学会近畿地区セミナー、2018年6月23日
    • 招待講演
  • [学会発表] PD-1阻害がん免疫治療法の最前線2018

    • 著者名/発表者名
      茶本健司
    • 学会等名
      第120回兵庫県皮膚科医会、神戸、2018年6月30日
    • 招待講演
  • [学会発表] The role of fatty acid oxidation of T cells in the synergistic effect with PD-1 blockade2018

    • 著者名/発表者名
      Chamoto K.
    • 学会等名
      The 6th JCA-AACR Special joint Conference, July 12th, Kyoto
    • 国際学会
  • [学会発表] Energy metabolism regulation in T cells improves the efficacy of the PD-1 blockade cancer immunotherapy.2018

    • 著者名/発表者名
      Chamoto K.
    • 学会等名
      Novartis Asian-Pacific Summit 2018, July 14th, Taipei.
    • 国際学会
  • [学会発表] PD-1阻害がん免疫治療におけるT細胞脂質代謝の重要性2018

    • 著者名/発表者名
      茶本健司
    • 学会等名
      第22回日本がん免疫学会 シンポジウム4, 岡山、2018年8月2日
    • 招待講演
  • [学会発表] 代謝シグナル分子を標的とした腫瘍免疫学の新展開2018

    • 著者名/発表者名
      茶本健司
    • 学会等名
      第22回日本がん免疫学会 ランチョンセミナー2、 岡山、2018年8月3日
    • 招待講演
  • [学会発表] PPAR-induced fatty acid oxidation in T cells ameliorates the antitumor activity of PD-L1 blockade.2018

    • 著者名/発表者名
      Chamoto K, Honjo T.
    • 学会等名
      第77回日本癌学会学術総会 シンポジウムS1、大阪、2018年9月27日
    • 招待講演
  • [図書] メディカル・サイエンス・ダイジェスト 45(2),95-98. 祝 本庶佑ノーベル賞受賞記念特集号 がん免疫治療の新展開:免疫代謝とPD-1阻害剤2019

    • 著者名/発表者名
      波多江龍亮、茶本健司
    • 総ページ数
      4
    • 出版者
      ニューサイエンス社
  • [図書] 生体の科学 70(3) 特集:免疫チェックポイントによる免疫制御, in press. PD-1/PD-L1による免疫制御2019

    • 著者名/発表者名
      高塚奈津子、茶本健司
    • 総ページ数
      *
    • 出版者
      医学書院
  • [図書] The Lipid 第134号 特集:免疫と代謝の接点:イムノメタボリズム, 30(2),195-202. イムノメタボリズムの新たな展開:がんとイムノメタボリズム2019

    • 著者名/発表者名
      高塚奈津子、茶本健司
    • 総ページ数
      8
    • 出版者
      メディカルレビュー社
  • [図書] Vita 35 (1), 49-57. 企画:特集がん免疫療法の展開、総論:抗PD-1抗体を用いたがん免疫治療の現状と進展2018

    • 著者名/発表者名
      茶本健司
    • 総ページ数
      9
    • 出版者
      ビー・エム・エル
  • [図書] JSI Newsletter 26 (2), 8. T細胞のエネルギー代謝とがん免疫2018

    • 著者名/発表者名
      茶本健司
    • 総ページ数
      *
    • 出版者
      日本免疫学会
  • [図書] がん分子標的治療 16 (2),90-93. PD-1阻害がん免疫療法におけるミトコンドリアを介したエネルギー代謝の重要性」2018

    • 著者名/発表者名
      仲島由佳、茶本健司
    • 総ページ数
      4
    • 出版者
      メディカルレビュー社
  • [図書] 臨床免疫・アレルギー科 69 (6), 546-551. 免疫代謝制御とPD-1阻害がん免疫治療2018

    • 著者名/発表者名
      波多江龍亮、茶本健司
    • 総ページ数
      6
    • 出版者
      科学評論社
  • [図書] 実験医学 36 (9), 1468-1473. がん局所の代謝改善による免疫抑制の解除2018

    • 著者名/発表者名
      高塚奈津子、茶本健司
    • 総ページ数
      6
    • 出版者
      羊土社
  • [図書] コスモバイオニュース「がん免疫」. がん免疫治療の現状と展望2018

    • 著者名/発表者名
      茶本健司
    • 総ページ数
      *
    • 出版者
      コスモバイオ株式会社
  • [図書] 「免疫と炎症」27(1),7-13. T細胞代謝のリプログラミングと抗腫瘍免疫2018

    • 著者名/発表者名
      伊藤寿宏、茶本健司
    • 総ページ数
      7
    • 出版者
      先端医学社
  • [図書] 現代化学 (573),28-32. PD-1阻害による新たながん治療法の開発2018

    • 著者名/発表者名
      伊藤寿宏、茶本健司
    • 総ページ数
      5
    • 出版者
      東京化学同人
  • [図書] がん分子標的治療 16(3),243-248. がん免疫治療の効果増強法の開発:併用治療の現状と展望2018

    • 著者名/発表者名
      熱田雄、波多江龍亮、茶本健司
    • 総ページ数
      6
    • 出版者
      メディカルレビュー社
  • [図書] 日経サイエンス12月号 監修者ノート 48(12),12-19. 免疫の「ブレーキ」解除でがんをたたく2018

    • 著者名/発表者名
      茶本健司
    • 総ページ数
      8
    • 出版者
      日経サイエンス社
  • [備考] PD-1プロジェクト

    • URL

      http://www2.mfour.med.kyoto-u.ac.jp/pd-1_project.html

  • [産業財産権] PD-1シグナル阻害剤含有薬剤による治療有効性の予測及び/又は判定マーカー2019

    • 発明者名
      本庶佑、茶本健司、松田文彦
    • 権利者名
      本庶佑、茶本健司、松田文彦
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2019-000181
  • [産業財産権] 免疫チェックポイント阻害剤の奏効性の判定を補助する方法、試薬キット、装置及びコンピュータプログラム2019

    • 発明者名
      本庶佑、茶本健司、林秀敏、中川和彦、後藤恵、宇賀均
    • 権利者名
      本庶佑、茶本健司、林秀敏、中川和彦、後藤恵、宇賀均
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      PCT/JP2019/ 10601
    • 外国

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公開日: 2022-12-28  

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