研究課題
免疫チェックポイントの阻害抗体により臨床試験でのがん治療奏功率は約20-50%と劇的に向上したが、約半数の患者には依然大きな治療効果は見られない。なぜ抗PD-1抗体治療に不応答な患者がいるのか、その原因を解明するためには、抗腫瘍免疫メカニズムを解明する必要がある。腫瘍免疫機構として細胞性免疫と体液性免疫が挙げられるが、それらの相互作用の詳細は不明点が多い。本研究では、細胞性免疫におけるがん反応性キラーT細胞と Tregの制御関係、体液性免疫におけるB細胞を介した抗体免疫について追求する。我々は、B細胞を欠損するマウスでは細胞性免疫を介した抗腫瘍効果が高くなることを明らかになった。B細胞欠損マウスではIgA産生がなく腸内細菌に異常が起きていることがわかっている。Germ freeのB細胞欠損マウスでは抗腫瘍増強効果が減弱したので、B欠損が腸内細菌の異常をきたし、細胞性免疫のがん免疫力を強化していることが明らかになってきた。この腸内細菌異常は、腸管局所・全身のtype-I IFNシグナルのベースラインの上昇を引き起こしていた。CD8+T細胞のシングルセル解析をおこなったところ、これらIFNシグナルを示唆するマーカーの上昇は、予想に反してCD44 negative, CD62L positiveのnaive分画がで顕著であった。UVによって異なった蛍光を発するKikGRトランスジェニックマウスを用いたT細胞追跡実験では、腸管リンパ節に照射したのT細胞がのうち末梢血に循環する主分画にはnaive T細胞であった。これらのことから、腸内細菌異常により腸管で教育されたnaive T細胞が末梢血に流出し、抗腫瘍効果を上昇させているということが実証された。興味深いことにB細胞欠損マウスではTregの数が減少していた。Treg減少については現在もメカニズム解析を続けている。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 5件、 招待講演 13件) 図書 (6件) 産業財産権 (3件) (うち外国 2件)
Elife
巻: 9 ページ: 52330
10.7554/eLife.52330.
JCI insight
巻: 5 ページ: 133501
10.1172/jci.insight.133501.
Int J Clin Oncol.
巻: in press ページ: in press
10.1007/s10147-019-01588-7
Sci Rep
巻: 9 ページ: 10144
10.1038/s41598-019-46548-3.