真核生物のゲノム構造進化に「ゲノム重複」はどのような本質的役割を果たすのか。その詳細解明のボトルネックは、全ゲノム重複が“繰り返し実験”をすることができない稀なイベントであることにあった。本研究では、ゲノム生物学史上極めてユニークなデータである「近縁系統で独立に全ゲノム重複を経験した真菌群」のゲノムデータを徹底的に解析することを目的とした。特に、これにより、真確生物のゲノム進化にゲノム重複が果たす役割を、遺伝子セットの進化、遺伝子の並び順(シンテニー)の進化、遺伝子配列の進化の3つの観点から、飛躍的に高い解像度で解明することを具体的な狙いとしている。この目的を達成するため、平成28年度は、ゲノムデータの質の向上を行った。本研究が対象とする真菌は、モデル生物である出芽酵母や分裂酵母が属する子嚢菌門とは異なるグループに属している。そのため、出芽酵母や分裂酵母の遺伝子に対して配列相同性検索を行うだけでは、十分な解析の精度を確保できない問題が生じる可能性がある。とりわけ、データの質が低い場合には、単純な手法によるデータ解析を行うだけでは、その後の解析に必要な十分な遺伝子アノテーションの精度を確保できない問題が生じる可能性がある。そこで、シーケンスデータを追加解析するとともに、スーパーコンピュータを用いたゲノム情報解析を行うことで、今後の解析に必要なデータの質の向上を達成した。また、これらのゲノムデータを用いた研究成果の一部について、論文発表を行った。
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