研究課題/領域番号 |
16H06155
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小林 徹也 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (90513359)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 着床前杯 / 発生系譜 / 分岐過程 / 系譜解析 / 隠れ状態 / 核同定 |
研究実績の概要 |
28年度に調整を完了した発生4D画像からの自動核同定および手動補正のシステムを活用して、異なる培養条件下の胚発生過程での割球の位置を同定したデータの作成を進めた。前年度にGUIなどを工夫して、インフォマティクスの知識のない実験系の学生でも修正作業に従事できるようにしたため、予定よりも多くの胚について胚内の割球の位置を同定したデータを作成することができた。
また、前年度にHormzらを招聘して議論を重ねた系譜の統計解析方法についての開発を進めた。Hormozらの方法は物理学的な手法を背景に娘細胞などのpair correlatorに着目して細胞状態変化を系譜から推定するものであったが、主に細胞の表現型変化に詳細釣り合いを仮定し、また細胞分裂時の分裂時間の確率性や差などを無視したものだった。この方法をNozoeらの細胞の履歴に着目した解析や確率過程における分岐過程の文脈で解釈をし直し、より統計的な手法へと発展させた。具体的には、分岐をする隠れ状態を持つ統計推定問題として再定式化をして、より統計学的な視点からの解析手法の開発に取り組んだ。特に実際の発生系譜で見られる細胞分裂時間の差などを直接取り扱えるように手法を構成した。これらの結果について、4件のヨーロッパ開催の国際会議にて発表を行い、手法の改良の方向性について数学者・生物学者の双方からフィードバックを得た。
画像解析の効率化のための同時最適化は、トラッキングにおけるスコア関数の設定に困難があることが前年度にわかってきたため、そこに更に核同定の最適化を加えることは困難と判断した。代わりに、共同研究者らと共にすでに作成できている核同定の結果を元にして、3Dイメージからの核同定の精度を深層学習によって高める方向性の探索と検討を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イメージデータからの発生系譜の再構成については、前年度のGUIの改良の効果で、当初の想定よりも効率が上がった。また系譜統計解析手法の開発についても、当初想定以上に明確な数理構造を先行研究から抽出することに成功し、その拡張の道筋を立てることができた。 一方、細胞追跡や同時最適化による画像解析精度の向上については別の方策を考える必要が出てきた。深層学習なども検討してきたが、現時点で決定的な解決には至っていない。 上記を平均すると全体としては順調な進行であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
系譜データの完成のため、画像からの核同定や系譜追跡の精度の向上を検討する。合わせて、それらが上手く行かなかった場合のために、手動での追跡エラーを補正のシステムの開発もすすめる。
また効率的な画像解析や手動補正作業のためにSSDをベースとした高速なデータ読み出しが必要なるが、核同定データの蓄積に伴い、現行の高速SSDの容量を超えるデータが蓄積されてきた。またデータの同期にも時間がかかることとなってきた。これらのインフラ上の課題の解決も合わせてすすめることとする。
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