研究実績の概要 |
画像解析を総括し、その一部を自動核同定のアルゴリズム修正にフィードバックして効率を高めた。また、本研究の自動画像解析およびGUIによるエラー補正で得られた細胞核同定情報を教師データとして、深層学習による各同定アルゴリズムの評価を行い、既存のシステム以上の精度を学習で実現できることを確認した。特に細胞数が増えた状況での各同定に有効であることがわかった。 発生4Dデータと発生系譜データを元に、その振る舞いを再現する発生力学モデルの構築を行った。 細胞の弾性力などの計測実験を元に、非線形な仮想力を細胞間で仮定し、ノイズを加えたシミュレーションで再現性を確認した。その結果、排除体積による反発力、接着にもとづく引力のみならず、細胞分裂時に細胞を引き話す積極的な力の存在が、胚内での大きな細胞の運動の再現に必要であることがわかった。一方で、力学モデルで実際に観測されている細胞の軌道を復元することは極めて難しいことも確認された。 関連して、細胞集団の運動のデータから細胞間に働く相互作用を推定する手法の検討も行った。2次元細胞運動を対象に、モデル推定により相互作用の種類を辞書の中からモデル選択的に選ぶ手法などを検討した。データの再現に関しては極めてよい性質が得られるものの、データの予測の精度が上がらず、また精度の高いモデルで選ばれている相互作用が必ずしも物理的要請と整合するものではないことが明らかになった。 計測された系譜データに基づき5%, 20% O2の結果を比較することで生きの良さが胚のどのような性質に反映されるかを解析した。特に4から8細胞期、そして8から16細胞期の分裂タイミングにおいて顕著な分裂の遅れと分裂タイミングの脱同調が20% O2条件で確認された。またコンパクションやキャビテーションなどの胚全体での構造変化が必ずしもこれら細胞周期の遅れと強く相関していないことも示唆された。
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