研究課題/領域番号 |
16H06158
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
市川 光太郎 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 准教授 (70590511)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 受動的音響観察 |
研究実績の概要 |
2018年1月にタイ国トラン県タリボン島の潮間帯海草も場において約9日間の受動的音響観察を実施した。自動水中音録音機AUSOMS-mini2を海草も場に埋設し、48 kHzで連続録音をした。得られた水中音データからジュゴンの摂餌音を自動的に抽出するソフトウェアを構築した。本ソフトウェアはまず広帯域のパルス音群をオープニング処理などにより検出し、その音圧や時間間隔に関する自己相関係数に閾値をかけることで摂餌音を検出する。精度検証の結果、録音されていた摂餌音の86%を検出し、誤った検出は3.3%であった。ジュゴンの摂餌音は大潮期間には日中に記録され、小潮期間には夜間に記録された。潮間帯海草も場におけるジュゴンの摂餌について重要な情報が得られた。なお、2014年11月にタイ国において現地研究機関が実施した調査に対して2015年1月に市民デモが発生し、2017年も引き続き反対活動が継続された。このような状況で最大の成果を上げるために、代替調査地であるマレーシアにおいて研究を遂行した。 2017年11月にマレーシア・ジョホール州・ティンギ島およびシブ島において受動的音響観察を実施した。摂餌場には小型水中音録音機AUSOMS-miniを2台およびAUSOMS-mini2を1台、AUSOMS-Dを1台設置した。摂餌場では海中の音環境がおよそ12時間の周期で変動することがわかった。一方、鳴音ホットスポットでは大きな変動はなく、一様な環境が終日続くことがわかった。また、人為的に摂餌音を発声させる実験により、摂餌音の集録範囲はおよそ10mであることがわかった。なお、現在までの解析では、摂餌音、鳴音ともに記録されていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タイ国タリボン島周辺におけるジュゴンの捕獲調査については、地元住民とタイ国関係官署との関係が悪化したため、潮間帯の海草も場における受動的音響観察による摂餌行動観察を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、スーダン、タイ、マレーシアで現地調査を行う。スーダンでは社会情勢の悪化が予想される。スーダンにおける調査遂行が困難な場合は、インドネシアやベトナム、パラオなど別の海域において調査を実施する。 タイではジュゴンの摂餌場利用特性に焦点をあてた行動観察を実施する。 マレーシアでは長期間の受動的音響観察を実施する。これにより、ジュゴンの行動だけでなく、主に船舶航行による人間の海域利用について情報収集する。
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