研究課題
コヒーシンは、最も重要な染色体構造形成タンパク質のひとつで、姉妹染色体接着を形成し、正確な染色体分配に必須である。SMC サブユニットを中核とする巨大なリング状構造のATPase複合体であるコヒーシンは、そのトポロジーを利用して、リングの内側に通すかたちでDNAと結合し、2本以上の DNAを束ねることによって、姉妹染色体接着をはじめとした、染色体高次構造の形成を行うと考えられている。本研究は、我々が構築した精製タンパク質を用いたコヒーシンの機能的なDNA結合反応の試験管内再構成実験を元に、姉妹染色体接着の形成機構について明らかにすることを目指す。本年度は、コヒーシンのDNA結合反応について詳細に解析し、この複合体が一度に2本のDNAと結合し、つなぎとめる活性があることを見出した。これは、姉妹染色体接着を形成するのにまさに必要なDNA-タンパク質構造体であると考えられる。コヒーシンとローダーの相互作用解析から、コヒーシンは大規模な構造変化を起こしてトポロジカルにDNAと結合すると予想されている。高速 AFM を用いた一分子観察により、コヒーシンが想像以上にフレキシブルであり、容易に構造を変化させる性質があることがわかった。これらに加え、姉妹染色体接着形成に必須な コヒーシンの Psm3 (Smc3) サブユニットのアセチル化を行うアセチル化転移酵素のEso1を組み換えタンパク質として精製した。
2: おおむね順調に進展している
コヒーシンによる姉妹染色体接着の形成はDNA複製を共役しておこることが知られている。そのため、コヒーシン単体では姉妹染色体接着の形成に必要な2本のDNAと同時に結合する反応は行えないと考えられていた。それゆえ、本年度確認されたコヒーシンによるDNAつなぎとめ活性は、これまでの姉妹染色体形成モデルを変えうる大変革新的な発見である。また、コンデンシンやSMC5/6複合体の分子作用機構を考察する上でも重要な知見であると考える。現在、この研究については論文を準備中である。さらに、本年度は、高速 AFM による一分子解析、コヒーシンアセチル化酵素Eso1の精製を行い、解析の方向性を多様化することができた。
コヒーシンの新規DNA結合活性についてさらに詳細に解析していく。とくに高速AFMの一分子観察と組み合わせ、2つのDNAをつなぎとめる構造の実像について明らかにする。コヒーシンのアセチル化反応を試験管内で再構成し、アセチル化がコヒーシンの活性に与える影響を解析する。特にコヒーシンのDNAからの解離反応における影響について検討する予定である。
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nature COMMUNICATIONS
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10.1038/ncomms13952
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