研究課題
光化学系IIは光駆動の水分子の分解反応とそれに伴う分子状酸素の発生を行う,分子量70万にもおよぶ巨大な膜タンパク質複合体である。光化学系IIによる水分解・酸素発生反応はマンガンクラスターによってKok-cycleと呼ばれる5つの酸化状態を経て触媒されるが,これまでに構造解析されたのは反応の開始状態およびS3中間体状態のみであり、反応機構について不明な点がある。このマンガンクラスターはX線によって損傷を受けやすく,構造解析には自由電子X線レーザーが必要である。H30年度はPSII反応中間体構造解析の残された反応中間体のひとつであるS2状態を固定ターゲット法を用いて構造決定した。固定ターゲット法は結晶試料をフォルダーに固定して構造解析する方法であり,PSIIの反応中間体を調製したのちにコールドトラップすることで,これまでにわれわれが用いてきたシリアルフェムト秒結晶構造解析法(SFX法)に比べて回折実験に必要な試料の量を1/10程度に減らすとともに,バックグラウンドの減少により分解能を大幅に上昇させることができた。またS3反応中間体状態についても,これまでの分解能を上回る解像度で解析できたのでマンガンクラスター中の基質となる酸素分子の化学的状態を明らかにし、基質となる水分子の輸送に必要な水チャネルの構造変化を捉えることができた。これらの構造解析の結果は原著論文にまとめて投稿中である。また,昨年度より進めてきた閃光照射後の遅延時間をおいた経時的な構造変化を調べることは結晶の回折分解能が悪く,まだ十分な解析ができていない。引き続き条件を検討して詳細な構造解析を完結させたいと考えている
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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