研究課題/領域番号 |
16H06166
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
島本 勇太 国立遺伝学研究所, 新分野創造センター, 准教授 (80409656)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 有糸分裂 / 紡錘体 / キネシン / 分子モーター / 力計測 / アフリカツメガエル |
研究実績の概要 |
真核生物の細胞分裂時における染色体の均等分配は、紡錘体装置の適切な集合と機能に依存する。紡錘体は分裂期の細胞内でメカニカルな力を発生しまた受容しながらその構造を安定に維持して機能するが、そのしくみには不明な点が多い。特に、in vitro, in vivoレベルでは多くの知見が得られているが、両者の間には未だ大きなギャップが存在する。これを解決するため、紡錘体内で微小管が運動する様子をin situで観察しながら、力の効果を定量的に解析することができるアッセイ系を構築した。紡錘体を形成する微小管は非常に密に存在し、通常の蛍光観察で一本の運動を解像することは非常に困難である。またその動態は非常にダイナミックであるため、電子顕微鏡などの固定観察法は使えない。そこで、スペックル観察法と呼ばれる蛍光イメージング技術とマイクロニードルを基礎とした力計測・操作手法を組み合わせることによりこれを解決した。さらにcell-freeで細胞周期現象が再現できるアフリカツメガエル卵抽出液を用いることで、紡錘体に対する直接、定量的な力の計測と、蛍光標識チューブリンや阻害薬剤等の滴定添加を可能とした。その結果、紡錘体微小管は赤道面や極などの局所環境の違いに応じて力に対する運動特性が異なることが明らかとなった。ここで得られた結果はこれまでの主要な紡錘体モデルとは異なるものであり、イメージング計測のみでは捉えることのできなかった新しいメカニズムの存在を示唆するものである。
これとは独立に、ツメガエル卵抽出液の紡錘体形成活性を新鮮に調製した試料と同程度の活性で凍結保存する方法を開発した。これにより、調製や個体差に起因するデータのばらつきを低減し、紡錘体の硬さと極間距離の間に正の相関があることを発見した。
またここで開発した技術を用いて、共同研究を中心にERや微小管アスターなどの細胞内構造が持つ力学特性や集合活性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
紡錘体の力計測実験について、申請時に設定したマイルストーンを達成し、微小管運動の詳細について明らかにすることができたたため。また、当初予定していなかったツメガエル卵に関する新たなアッセイ法を開発し、論文成果発表に至ったため。この予想外の進展に注力したことに伴い、並行して進めていた再構成実験についてはアッセイ系の構築と実験条件の最適化に留まった。
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今後の研究の推進方策 |
紡錘体微小管の運動と局所力学特性の解析については、当該年度に得られた実験結果に基づいて新たなモデルを構築し、さらに分子摂動実験を加えて、論文成果発表、プロジェクトの完結を目指す。また新たに開発した抽出液抽出法について、研究室内での使用にとどまらず、他研究機関・研究者に分与する体制を整えることでこのモデル系を使った研究の推進に広く貢献することを目指す。再構成実験については共同研究先との交流をより活発に行いながらアッセイ系を確立し、微小管分子モーターが示す創発的な特性についてin vitroレベルでの知見を得ることを目指す。
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