近年の研究からオートファジーは非選択的な分解だけでなく、選択的に分解を行う選択的オートファジーが多様にあり、その生理的重要性が明らかとなってきた。Crinophagyは選択的オートファジーの一種である。小胞体内で合成されたサイトカインなどの分泌タンパク質は小胞輸送によってすぐさま分泌されるが、ホルモン産生細胞におけるペプチドホルモンは分泌顆粒として細胞内に一旦貯蔵される。そして必要時に細胞外へ分泌される。Crinophagyは不要となった分泌顆粒を分解するメカニズムであると概念的に考えられているが、分子機構もメカニズムも明らかとされていない。培養細胞内のcrinophagy活性を簡便に測定するため、蛍光タンパク質とペプチドホルモン遺伝子を駆使することで、細胞あたりの蛍光タンパク質の発現比率から簡便にcrinophagy活性を測定できるcrinophagyアッセイ法の開発を前年度に成功した。本年度は開発したcrinophagyアッセイ法を用いて、哺乳類ホルモン産生細胞の分泌顆粒を分解を導く誘導条件を、様々な生理活性物質を利用して検討した。その結果、いくつかの生理的刺激によってペプチドホルモンのリソソーム輸送が促進されることがわかった。 今後、現在用いているホルモン産生細胞は増殖能が貧しいため、実験の進行を早められるように他のホルモン産生細胞の利用の検討と、crinophagy誘導刺激のより詳細なメカニズムを調べる。Crinophagyの効率的な誘導条件が決定した後、CRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat)法を利用した遺伝子スクリーニングを進める。これらの実験を進めることで、crinophagy遺伝子の同定と分子メカニズムの理解が期待される。
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