本研究課題は木部道管の二次細胞壁パターンの形成機構を明らかにすることにより、細胞の形態形成を担う細胞の空間情報処理機構を理解することを目的とします。平成28年度は二次細胞壁パターンに異常を示すシロイヌナズナ変異体の解析および逆遺伝学的に同定した二次細胞壁パターン制御因子の解析を行いました。次世代シーケンサーを用いたゲノム解析により、二次細胞壁パターンに異常を示す変異体の原因遺伝子として、ROP GTPase制御因子、微小管タンパク質、転写因子などをコードする遺伝子を同定しました。これらの遺伝子のT-DNA挿入変異体においても同一の表現型が観察されたこと、また一部の変異体に関しては相補実験により表現型が回復したことから、これらが原因遺伝子であることが判明しました。逆遺伝学的手法により同定した新規の微小管付随タンパク質ファミリーの解析も行いました。この遺伝子ファミリーのT-DNA挿入変異体を解析しましたが、顕著な表現型が観察されなかったことから、このファミリーの遺伝子が冗長的に働いていることが示唆されました。公開されているシロイヌナズナのRNAseqデータを解析した結果、これらの遺伝子が道管を含み広く植物体において発現していることがわかりました。そのうち、道管で発現する2つの遺伝子のT-DNA挿入変異体をクロスし、二重変異体を作出したところ、二次細胞壁のパターンに若干の異常が観察されたことから、これらの微小管付随タンパク質が二次細胞壁パターンの形成に貢献していることが示唆されました。
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