研究課題
哺乳類の目において、1-2%の網膜神経節細胞に青色光感受性の光受容タンパク質であるメラノプシンが発現しており、メラノプシン発現網膜神経節細胞と呼ばれる。メラノプシン発現網膜神経節細胞は自身で光を感じると共に桿体・錐体からの投射も受け、概日時計の位相調節や瞳孔の開閉などの非視覚応答を制御する。つまり、哺乳類の網膜においては桿体・錐体に加え、メラノプシン発現網膜神経節細胞が第三の光受容細胞として機能する。メラノプシンは桿体・錐体の光受容体とは異なり、無脊椎動物のオプシンに類似してると考えられている。視覚応答・非視覚応答を理解するために、メラノプシン発現網膜神経節細胞内で光情報がいかに制御されているのかを解明したい。本年度はメラノプシンの性質を明らかにするためランダムミュータジェネシスおよび特定の領域を狙った変異体の作製を同時並行させた。哺乳類の培養細胞を暗黒条件下で維持し、メラノプシン変異体を細胞に発現させ、青色光の照射によるカルシウム濃度の変化、つまりメラノプシンの光応答をin vitroで測定した。数種類の光応答変異体を単離することに成功し、得られた変異体を組換えアデノ随伴ウィルスベクター用いてマウスの網膜神経節細胞に発現させて非視覚応答を測定し、in vivoで変異部位の意義を評価した。C末端細胞内部位の一部であるSer/Thr領域がアレスチンを介したリン酸化と(未発表)、それに伴う光応答終了に寄与していることを明らかにした(Neuron 2016)。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画ではメラノプシンの様々な変異体の作製を進める予定であり、実際にそれを遂行して細胞に発現させることで機能を評価し、in vivo実験に持ち込む候補分子を得ることが出来た。また、網膜神経節細胞への導入方法を確立することができた。このように研究は計画通り順調に進んでいる。
今後は選定した候補分子を各種生物のin vivoにおいて評価する。そのための行動・生体レベルでの評価系の構築に取り掛かる。明暗環境をコントロールできる動物飼育環境のセットアップ、瞳孔収縮測定の構築、そのための暗室などを整える。
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EBioMedicine
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10.1016/j.ebiom.2016.12.007
Neuron
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