研究課題/領域番号 |
16H06176
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
林 眞理 京都大学, 白眉センター, 特定助教 (90761099)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | テロメアクライシス / テロメア脱保護 / M期停止 / 細胞周期 / BLM |
研究実績の概要 |
前年度に構築した姉妹染色分体融合を可視化する細胞系は融合の融合効率が2%程度しかないという問題点があった。これが細胞クローンによる影響である可能性を考え、再び姉妹染色分体融合細胞の構築を行い、複数のクローンを解析したところ、1つのクローンにおいて融合の誘導効率が10%程度であるクローンを得た。一方、姉妹染色分体融合可視化システムは、①CRISPR/Cas9によるサブテロメア領域の切断、②姉妹染色分体の融合、③mCitrineタンパク質の発現という3ステップによって染色体融合の可視化を実現しているが、このうち①及び③のステップが細胞の挙動に影響を与えている可能性があった。そこでCRISPR/Cas9で切断すると染色体融合を経ずにmCitrineが発現するコントロール用の細胞系を、これまでの知見をもとに構築した。これによってより厳密な姉妹染色分体融合の運命解析が可能となった。 M期停止細胞においてテロメアが脱保護を受けるメカニズム解明を目指し、前年度までに得られていたBLMヘリケースの関与を示唆する結果をさらに発展させた。BLMの形成する主要な複合体であるFANCJ-BLMおよびBLM-TopIII-RMI1-RMI2(BTR)複合体に着目し、どちらかの複合体がM期テロメア脱保護に関与する可能性について検討するためFANCJおよびRMI1をshRNAによって抑制した条件で解析を行ったところ、FANCJの抑制は影響がなかった一方、RMI1の抑制ではM期テロメア脱保護が抑制されることが分かった。この結果と、前年度に得られたBLMのヘリケース活性がM期テロメア脱保護に関与しないという結果を総合すると、TopIII(トポイソメラーゼIII)の酵素活性がこの反応に関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
姉妹染色分体融合系の構築後、融合効率の上昇や、比較対象のためのコントロール細胞系の構築などを行い、系の改善に務めた。これらは当初の計画で想定していたよりも困難な作業であったが、結果として系が改善されたことから、全体としてはおおむね順調に進展していると判断した。 M期テロメア脱保護メカニズム解明についても、関与する因子の絞り込みが進展し、分子メカニズムの解明に向けて順調に研究が展開していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに構築した姉妹染色分体融合系、及びコントロール細胞系に、細胞周期の可視化を可能とするタンパク質を導入し、姉妹染色分体融合後の細胞周期異常を解析する。また細胞周期の制御に中心的な役割を果たすp53の働きを阻害した条件で同様の実験を行い、細胞周期の停止能を失った細胞において染色体融合がどのような影響を細胞にもたらすのかについてライブセルイメージングを駆使して解析する。 M期テロメア脱保護研究においては、RMI2およびTopIIIの抑制を行い、BTR複合体がM期テロメア脱保護に関与する可能性をさらに追求する。またshRNAに耐性のあるTopIIIを構築し、レスキュー実験を行う。さらに活性を失ったTopIII変異型で同様の解析を行い、TopIII活性がM期テロメア脱保護に必要な可能性について検討する。またBTR複合体のM期停止中のテロメア局在や、テロメア因子との結合の可能性について検討し、分子メカニズムの解明を目指す。
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