本研究計画では、単一の姉妹染色分体融合をX染色体に引き起こし、さらに蛍光タンパク質であるmCitrineの発現を協調して誘導することで、そのような姉妹染色分体融合を持つ細胞をラベル可能な系の構築、並びにその系を利用した姉妹染色分体融合の運命解析を目的としている。実際にそのような系を構築し、ライブセルイメージングによる動画解析を行なった際に、融合を持たないコントロールの細胞においても、実に多様な細胞周期異常が観察されることが明らかとなった。そこで、CRISPR/Cas9の切断による影響や、mCitrineの発現、細胞の個性など、様々なパラメータを考慮に入れた統計解析が必要であると考え、京都大学白眉センターの加賀谷助教との共同研究として研究を展開した。数々のモデリング、統計解析を経て、姉妹染色分体融合こそが、微小核形成に影響を与える唯一のパラメータであることを突き止めた。本研究成果は、bioRxivにて公開し、現在EMBO Journalにて査読を受け、改訂中である。この過程において、単一の姉妹染色分体融合は、微小核を形成を経て、染色体の断片化や細胞周期異常を引き起こすというモデルを提唱した。 M期テロメア脱保護機構の解明に関する研究においては、BLMヘリケースとテロメア結合タンパク質TRF1の結合が必要であることを示唆する成果を得た。TRF1の点変異による解析から、TRF1のAurora Bリン酸化サイトがその制御に関与することが示唆され、M期テロメア脱保護の分子機構の一端が明らかになりつつある。
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