研究課題/領域番号 |
16H06177
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
相馬 雅代 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (00578875)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 進化 / 性淘汰 / 社会行動 / 鳴禽類 / 求愛 |
研究実績の概要 |
旧年度からの研究に引きつづき,カエデチョウ科鳥類を対象に,なぜ複数モダリティにまたがる「派手な」装飾形質や行動が進化し,それがときに雌雄に備わるかを明らかにするため,(1)行動研究と(2)種間比較研究とを並行しておこなった.
(1) 行動研究においては,特に求愛に用いられる視覚ディスプレイ(求愛ダンス)がなぜ雌雄に共有されるのか,について多角的に見当し,多くの成果を得た.これまでの鳴禽類鳥類の研究では,雌雄に共有される視聴覚ディスプレイがある場合,これを双方向的に同期させることで,有効なコミュニケーションシグナルとして機能していることがしばしば指摘されてきた.しかし,カエデチョウ科の一種であるブンチョウによる研究からは,実際には雌雄で求愛ダンスを同期しているというよりは,個体内でのリズムが求愛ダンスの表出に影響を与えていることが明らかになった.さらに,メスのコンディションが求愛ダンスの表出に影響を与えることも分かったことから,一見同期しているかに見える求愛ダンスは,実際にはさほど同期性が高くなく,単に高頻度な求愛が一見同期しているように見えている可能性が高い.
(2) 種間比較研究においては,引き続き視覚シグナルに関しての検討を行っている.これまでの研究では,カエデチョウ科の求愛ダンスの複雑さは,色の派手さではなく,模様の派手さと相関進化しており,そのことは,模様の性的信号としての有効性を間接的に示唆している.実際に,いくつかの種について求愛ダンスと模様の関連に着目し調査をおこなったところ,模様のある部分の羽だけを逆立てて求愛ダンスを呈することが判明した.これに関し,カエデチョウ科ではなぜ模様が性的シグナルとして機能しうるのか,感覚便乗仮説からの説明が可能ではないかという洞察を得て,さらなる検討をすすめようとしている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究の進捗は,総じて非常に良好であると判断する.それは,本課題に関わる実験・調査が順調にすすんでいること,学会発表も活発に行ってきたことに加え,招待講演(2件),学術論文(5件)を年度中に発表したことにも明らかである.この他にも,国外・国内において市民セミナーの講演もおこない,これまで得られた成果は多くの注目を集めた.なお,論文1報については,プレスリリースも発表している.
さらに本年度は,予測しなかった洞察(研究実績の概要)を得ることができ,本課題は当初の計画をこえて順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は,最終年度を迎える.そのため,特にプロジェクト全体を総括する統合的な知見が得られるよう,系統種間比較解析に力を入れて研究を遂行する.また,行動解析に関しては,国外ワークショップでの発表・議論への招待を受けており,モデリング等さまざまなアプローチを試すことで,発展的展開を目指したい.
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