最終年度は、新規の鉄酸化菌の分離培養株の獲得を試みた。茨城県つくば市に、大規模な鉄酸化沈殿物が生じている場所を発見し、同地点を淡水域のモデル地の1つとして研究を進めた。グラジェント培養法を用いた限界希釈法によって、表層試料から淡水性鉄酸化菌を4株分離することに成功した。その内、2株はSideroxydans lithotrophicusに近縁であったが、16S rRNA遺伝子配列の相同性は98%以下であり、新種の可能性がある。顕微鏡観察の結果、螺旋状のストークは産出せず、粒子状のドレッドのみを産出することが示唆された。もう2株はThiomonas delicataに近縁であったが、16S rRNA遺伝子配列の相同性は97%以下であり、こちらも新種の可能性がある。興味深いことに、ストークやドレッドのような典型的な酸化鉄沈殿をつくらなかった。以上の成果については、論文執筆中である。鉄を含む淡水の温泉試料を元にした連続培養系のメタゲノム解析を行い、新規の鉄酸化バクテリアの存在を示唆した。この成果はMicrobes Environ.誌にて発表した。海洋性の硫化鉄鉱物のメタゲノム解析もを行い、新規の鉄還元バクテリアのゲノムの再構築に成功した(Environ. Microbiol.誌に発表)だけでなく、Zetaproteobacteriaに属する新規性の高い鉄酸化バクテリアのゲノムの再構築にも成功した。海洋性の鉄マンガン酸化物の微生物群集構造を解析し、得られた成果をMicrobes Environ.誌にて発表した。申請者が分離したFerriphaselus amnicola OYT1株のゲノムについて、全ゲノム配列決定を完了し、その成果はMicrobiol. Resour. Announc.誌に投稿し受理された。
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