研究実績の概要 |
昨年までの研究により、EFR, 及びRBOHDの両方と複合体を形成する因子として我々が単離したREAL1はEFRをはじめとするPAMP受容体の負の制御因子であることが分かった。本年度はREAL1の機能を分子レベルで解明することを目的に研究を行ったところ、REAL1の過剰発現体ではPAMP受容体のタンパク質量が減少していることが分かった。逆に、REAL1の欠損変異体ではPAMP受容体の量は増えていた。よって、REAL1はPAMP受容体と結合してその量を負に制御することが明らかとなった(論文投稿準備中)。また、PAMP受容体の複合体の精製等から共受容体であるBAK1の新規リン酸化部位を同定した。BAK1リン酸化部位の解析から、多くのLRR型受容体キナーゼに共通に存在しその機能に必須なチロシンリン酸化部位を同定した(Perraki et al, Nature 2018,561:248-252)。 細胞内型の免疫受容体であるNLR受容体の活性化後に誘導される活性酸素生成の機構について調べたところ、RBOHDのS343、及びS347がリン酸化され、これが引き金となってRBOHDが活性化されることが分かった。これら部位のリン酸化はPAMP誘導性の活性酸素生成にも必須であることから、二種の免疫受容体の情報伝達系の収束点と言える。また、UC Davisのグループと共同でNLR受容体活性化後のリン酸化プロテオーム解析を行い、多数の新規リン酸化タンパク質の同定に成功した。興味深いことに、この中にはRBOHDのS343/S347以外にも二種の免疫受容体の情報伝達系の両方でリン酸化されるものがあり、その中にはPEN3, ACA8, non-canonical Gα protein XLG2等、既知の植物免疫の制御因子が含まれていた(Kadota et al., New Phytol. 2019)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
RBOHD及び、PAMP受容体の新規制御因子の研究は計画通り順調に進んでいる。また、BAK1の解析から植物の多くのLRR型受容体キナーゼの活性化に必須なチロシンリン酸化部位を同定した(Perraki et al, Nature 2018,561:248-252)。加えて、細胞内型の免疫受容体であるNLR受容体の活性化後にリン酸化されるRBOHDの部位を同定するとともに、これら部位のリン酸化が活性酸素の生成と抵抗に重要であることを示した (Kadota et al., New Phytol. 2019)。さらに、リン酸化プロテオーム解析解析から、RBOHDをはじめPEN3, ACA8, XLG2等の既知の免疫制御因子は、PAMP受容体、及びNLR受容体の活性化後に同じ部位がリン酸化されることを発見し、これらリン酸化部位が二種の免疫受容体の情報伝達系の収束点であることを示した。よって、本年は計画以上に研究が進展したものと考えている。
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