研究課題/領域番号 |
16H06189
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
豊福 雅典 筑波大学, 生命環境系, 助教 (30644827)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | メンブランベシクル / 細胞外RNA / 細胞間情報伝達 |
研究実績の概要 |
RNAは細胞内での働きが主に研究されてきたが,細胞外にもRNA(exRNA)が放出され,何らかの役割を持つことが明らかになってきている。ExRNA研究は動物細胞において盛んに行われているものの,細菌におけるexRNAはその存在すらほとんど知られておらず,未解明な部分が大きい。本研究では細菌から放出されるexRNAを解析することで,基礎的な知見を得て,微生物学の新たな展開を図ることを目的とする。 前検討で,様々な細菌において放出される球状の膜(メンブランベシクル(MV))にexRNAが安定的に蓄積されることを見出した。そこで,MVに含まれるexRNA(mvRNA)を重点的に解析する目的として,mvRNAが多く放出される培養条件を検討し,その回収及び精製方法を確立した。その成果として,いくつかのモデル細菌でmvRNAを回収し,そのシークエンス解析を行った。また,mvRNAを回収する過程で,DNAもMVに含まれることが明らかとなったため,実環境サンプルを含む,一部のサンプルに関しては, MVに含まれるDNA(mvDNA)も合わせて解析した。mvRNAを回収する条件検討の過程で,どのようにして核酸がMVに含まれるかについても解析を行った。その結果,MVが形成される経路に依存して,MVの核酸含有量が変化することが明らかとなった。これは,MV形成が誘導される経路によって,MVの役割が異なることを示唆している。また,次年度以降にmvRNAがMVに包まれる過程やmvRNAの伝播を検証するための基盤となる,MV可視化技術に関する顕微鏡技術の構築に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,mvRNAの回収を終え,その中身(配列)の解析に着手できた。配列情報が膨大であるため,解析がまだ完全に終わっていないものの,計画に照らし合わせて概ね順調に進んでいる。一部のサンプルについては,解析結果によっては再度,培養条件を検討し直してシ―ケンシングを行う可能性がある。また培養条件検討の際には,MVの生産機構に関するヒントも得られた。さらにMVの形成過程を詳細の捉えるために,1細胞レベルでMV形成を可視化できる手法を構築し,MVにRNAが含まれる過程を解析するための基盤が揃ってきた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は得られた配列情報をもとに,mvRNAにどのような情報が蓄積されているのかを種間で比較しながら解析を行い,その生物学的な意義を明らかにしていく。さらに,配列情報からmvRNAがMVに取り込まれる機構を推定し,mvRNAの可視化手法を開発することで仮説を検証していく。
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