研究課題
近年,細胞外に放出されるRNAがメッセージ物質としての機能を持つことが明らかとなっている。細菌においても細胞外RNA(exRNA)の存在が確かめられているが,その詳細な中身はほとんど解析されておらず,その生物学的な意義については未解明である。本研究では細菌から放出れるexRNAを解析することで,それらの機能についての基礎的な知見を得ることを目的としている。前年度までに,メンブランベシクル(MV)がexRNAのキャリヤーとして働くことに注目し,MVに付随するexRNAをターゲットに解析した。その結果,グラム陰性菌,陽性菌を含めた様々な細菌種においてexRNAが放出されていることを明らかにした。さらには,それらの配列をシーケンシングして,細胞と比較することで,MVに蓄積されているRNAの配列を特定した。それらのRNAがどのような役割・生物学的意義を持つのか,引き続き解析中である。それと同時に,RNAがどのようにしてMVに含まれるのかを解析するために,MV形成メカニズムの解明を行なった。これまでに,グラム陰性菌において細胞が破裂して,そこから生じた膜断片が再会合することによって,MVが形成されることを明らかにした。その際,核酸を一緒に巻き込むことを確認している。このグラム陰性菌における機構に加えて,1細胞のライブセルーメージングを駆使することで,グラム陽性菌のMV形成機構も明らかにした。グラム陽性菌の場合は,厚い細胞壁に穴が空き,そこから膜が押し出される形でMVが形成されることが明らかとなった。その際,核酸も同時に放出されており,その一部はMVに含まれている様子が捕らえられた。
2: おおむね順調に進展している
グラム陽性菌のMV形成機構を明らかにし,どのようにしてMVの中身がパッキングされるかについての知見が明らかになった。今後はさらにMVに付随するRNAを解析することで,MV形成に関わる他の因子も同定できると考えている。さらに,今年度は細胞がMVの中身を受け取る機構の解析を進めていく。
MVが形成されて,RNAがどのような機構で包まれるのかについて,多くの知見が得られてきた。今後は,MVの中身がどのように伝達されるのか,どのような機能を持っているのか,これまで得られたMVのマーカーを追跡することで,研究を進める予定である。
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化学と生物
巻: 56 ページ: 79-80
Nature communications
巻: 8 ページ: -
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Microbes and Environments
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