研究課題
分子量が500-2000程度の「中分子」は、従来の低分子医薬品ならびに抗体を中心としたバイオ医薬品の利点を併せ持つ次世代の医薬品候補として、大きな期待を集める化合物群である。中でも、いわば「小さな抗体」であるペプチドは中分子医薬品の代表例の一つとなっている。合成上の観点からはペプチドは短ければ短いほど大量生産に適しているものの、短鎖ペプチドではコンホメーションが定まらず、期待された生物活性がほとんど、あるいは全く発現しないことも多い。このような背景を踏まえて、分子内に架橋構造を導入した環状ペプチドの研究開発が進められている。環状ペプチドではコンホメーションが固定されるため、短鎖ペプチドであっても高い生物活性や消化酵素に対する耐性が獲得されることが期待されている。しかしながら、分子内環化という鎖状ペプチドにはない反応段階を含むため、環状ペプチドの合成には依然として様々な技術上の課題が伴うのが実情である。加えて、鎖状ペプチドであっても、数百グラムのパイロットスケールはおろか臨床試験に必要な数グラムの量を供給することでさえも極めて困難である。そこで本研究では、環状ペプチドを含めた医薬品候補となる様々な生物活性ペプチドについて、時間やコスト面に優れた新たな合成法の開発を行った。現行のペプチド化学合成法の多くが不溶性の樹脂を担体として用いる固相法で行われているのに対して、我々は疎水性のベンジルアルコールを可溶性の担体として用いる液相法の研究開発を推進してきた。特に本研究ではこの方法を進化させ、様々な生物活性ペプチドのグラムスケールでの合成に適した、新たな担体の設計ならびに合成を進めてきた。その結果、僅かな構造の変化にも関わらず発色性や発光性を有する高機能な新たな担体を創出することに成功した。この技術を活かして、最大で百グラムを超えるスケールでの生物活性ペプチドの合成にも成功している。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 2件)
J. Org. Chem.
巻: 85 ページ: 6551-6566
10.1021/acs.joc.0c00544
ChemElectroChem
巻: 7 ページ: 1619-1622
10.1002/celc.202000275
Eur. J. Org. Chem.
巻: 2020 ページ: 570-574
10.1002/ejoc.201901576
Org. Process Res. Dev.
巻: 23 ページ: 2576-2581
10.1021/acs.oprd.9b00397
Org. Lett.
巻: 21 ページ: 8519-8522
10.1021/acs.orglett.9b02808
Electroanal.
巻: 31 ページ: 2299-2302
10.1002/elan.201900057
J. Synth. Org. Chem., Jpn.
巻: 77 ページ: 442-451
10.5059/yukigoseikyokaishi.77.442