研究課題
アルツハイマー病(AD)の原因物質であるアミロイド(Aβ42)は,凝集(オリゴマー化)することで神経細胞毒性を示す.Aβ42の凝集は,低分子のオリゴマーが生成する核形成過程と,それに続くアミロイド線維を生成する線維伸長過程からなることから,初期の核形成過程は毒性緩和の有効なターゲットである.2018年度までに研究開始時の目的であった核形成阻害剤であるウンカリン酸Cの作用機序をすでに明らかにすることができたので,本研究では類似の生理活性をもつ化合物の探索を行った.前年度までに確立した経時的なチオフラビンT蛍光試験によって,理研天然物バンクのパイロットライブラリー400種およびアルプル薬品工業から供与いただいた生薬ライブラリー400種の活性評価を行ったところ,核形成過程を阻害し,細胞毒性への寄与が低い線維伸長過程を促進するユニークな活性をもつ化合物を複数見いだした.作用機序に関する詳細な研究を続けるため,1年間繰越して研究を継続したところ,活性が顕著であった薬用植物ムラサキウマゴヤシを由来とするワルファリンは,マウス神経芽細胞腫Neuro-2aを用いたMTT試験において,Aβ42の神経細胞毒性を緩和した.さらに,オリゴマー特異的なA11抗体を用いたドットブロット法によってAβ42のオリゴマー形成能を阻害していること,クマリン骨格(2-ピロン)がオリゴマー抑制に関与していることがそれぞれ判明した.本実験に関しては,現在投稿論文のリバイス中である.一方で,前年度までに青じそ由来のカルコン化合物DDCの酸化代謝物はAβ42と共有結合することで凝集を阻害するデータを得ていたことから,カルコン類の推定代謝化合物3種をそれぞれ合成し,凝集抑制活性を調べた.その結果,その1つがAβ42の凝集および神経細胞毒性を阻害した.さらに,DDCをADモデルマウスに経口投与すると,脳内でAβ42との付加体を形成していることも高感度質量分析によって確認できた.
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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