研究課題/領域番号 |
16H06196
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
谷口 武士 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 准教授 (10524275)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | メタゲノム解析 / 乾燥地 / 乾燥ストレス / 根圏微生物 / 菌根菌 / 内生菌 / 内生細菌 |
研究実績の概要 |
本年度は2018年6月、アメリカのDeep Canyonにおいて調査を行った。昨年度同様、Encelia farinosaの根に共生する微生物の季節性を調べるため、炭素同位体分析用の葉、および微生物のメタゲノム解析用の根の採取を10個体について行った。また、ポット実験に用いる土壌を持ち帰り、乾燥条件(土壌含水率5%)、および湿潤条件下(土壌含水率12%)でE. farinosaに特徴的な微生物と微生物ネットワークを明らかにするためのポット試験を行った。また、対象区として、抗生物質を土壌に加える処理区を設け、微生物自体の有無がどのように植物の成長に影響しているのかについて調査を行った。 この結果、水分条件の影響として、植物の根長は乾燥処理区で湿潤処理区よりも長かったが、重量としては湿潤処理区で大きく、地上部と地下部の重量比率も湿潤処理区で大きかった。このことから、乾燥ストレスで、植物は根を発達させるが、成長量としては減少していることが確認された。菌類相については、NMDS解析およびPerMANOVA解析の結果、水処理による有意な影響が認められた。また、根と根圏土壌でも種組成や優占する菌類が大きく異なることが分かった。具体的には、アーバスキュラー菌根菌は乾燥時に減少し、この一方でSordariomycetes、Pezizomycetesの増加が認められ、これらの菌が乾燥時に重要である可能性が示唆された。今後、植物の成長、そして微生物間ネットワーク解析についてさらなる解析を進めていく。また、ポット試験で得られた植物根から内生菌と内生細菌の分離培養を行っており、今後、さらなる菌株の回収と整理を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
アメリカのDeep Canyonをモデルサイトとした本研究において、野外における内部根圏微生物情報として、雨季と乾季のそれぞれの季節に適応的な微生物に関するサンプリングは順調に進んでいる。また、内生細菌については、植物由来のDNAが検出される問題があったが、プライマーを改善することで、大きくデータの回収効率が向上している。また、ネットワーク解析については、ソフトウェアを用いてネットワーク指標を求めることは可能であるが、今後、解析の閾値決定やモジュールの検出などでさらに詳細な条件設定を行う。微生物機能については、先に行ったポット実験における実生の根圏土壌を用いたショットガンメタゲノム解析を行った。結果として、根圏土壌では非根圏土壌と比べて乾燥条件下でも微生物の機能遺伝子が安定的である可能性が見えてきたが、さらに詳細な解析を進める必要がある。 微生物の分離培養については、マイクロマニュピレーターを用いた採取条件を検討中であるが、時間を要するため、同時並行でポット実験において育成した実生苗の根から内生菌と内生細菌の分離培養を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
ネットワーク解析、およびショットガンメタゲノム解析について、データ解析を行うためのパイプラインを構築することに時間を要している。この点を解決するため、現在、共同研究を行っている研究者と情報共有を進めることで、データ解析にかかる時間を大幅に短縮する。微生物の分離培養については、菌株数を増やすため、植物培養土壌における微生物含有土壌の希釈化による釣菌法の開発を行い、多様な微生物を培養するための植物―微生物共生系を構築する。
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