研究課題
福島県の漁業は、原発事故から6年が経過した現在においても、水産生物の放射性セシウム(Cs)汚染の影響により、一部を除き操業休止を余儀なくされている。本研究の目的は、福島県の海面および内水面に生息する魚類の生態特性に応じたCs 汚染の実態を解明するとともに、本研究の成果を国内外に公表し、風評被害の払拭など、科学的根拠に基づく福島県の漁業再生に資することである。平成28年度は、まず、福島県における海面のモニタリング結果を国際誌に公表し、福島県沖に生息する魚類の原発事故後のCs汚染実態や試験操業の拡大過程について、国内外に広く報告した。また、学会活動や地域活動等を通じて、福島県の海面・内水面漁業が置かれている状況について積極的に発信した(日本水産学会のシンポジウムや、福島大学が主催する研究活動懇談会や成果報告会)。さらに、福島県漁業協同組合連合会が運営する地域漁業復興協議に委員として参加し、原発や周辺環境の状況把握に努めるとともに、試験操業拡大化(対象海域、対象種)に向けた討議に加わった。調査結果として、海面では、福島県沖に生息する底魚類のCs濃度分析を行い、これらのCs濃度が震災後6年間で著しく低下した実態を明らかにした。さらに、福島県の重要魚種であるホシガレイやマアナゴのバイオロギング調査を行い、魚種ごとの移動範囲や季節ごとの行動特性を明らかにした。一方、内水面では、帰還困難区域内の渓流域や貯水池に生息する魚類(ヤマメ、イワナ、コイ、フナ等)の調査を行い、これらのCs濃度が海水魚に比べて依然として高い実態を明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度は、計画通り、福島県のモニタリング結果や試験操業の拡大過程について、国際誌を通じて公表した。さらに、海洋生物のCs汚染や底魚類の移動生態や資源状況、および沿岸域の津波からの回復状況について、国際誌5編を通じて報告した。また、福島沖で採捕された底魚類のCs汚染レベルや代表種の移動生態などを明らかにするとともに、帰還困難区域内の河川や貯水池に生息する魚類のCs濃度についても明らかにした。
計画に従い、福島県の沿岸漁業の復興状況や海産物のCs濃度が低下した現状について、科学論文や学会発表、一般向けの講演会などを通じて幅広く周知する。また、帰還困難区域や周辺水域における淡水魚の調査を継続し、エサを介したCsの魚類への移行について明らかにする。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
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