研究課題
福島県の漁業は、原発事故から7年が経過した現在においても、水産生物の放射性セシウム(Cs)汚染の影響により、一部を除き操業休止を余儀なくされている。本研究の目的は、原発周辺も含め、福島県の海面および内水面に生息する魚類の生態特性に応じたCs 汚染実態の解明を目指すとともに、本研究の成果を国内外に公表し、風評被害の払拭など、科学的根拠に基づく福島県の漁業再生に資することである。平成29年度は、水産生物(海面・内水面)のCs汚染状況や漁業の復興状況について、学会活動や地域活動等を通じて積極的に発信した。具体的には、日本水産学会の創立85周年記念国際シンポジウム、東北支部シンポジウム、東日本大震災災害復興支援検討委員会や、福島大学が主催する研究活動懇談会(いわき市、東京都江東区)や成果報告会等で発表した。また、福島県漁業協同組合連合会が運営する地域漁業復興協議会およびふくしまの水産物販売戦略会議に委員として参加し、原発や周辺環境の状況把握に努めるとともに、試験操業拡大化(対象海域、対象種)や好適な販売手法の確立に向けた討議に加わった。また、調査結果として、海面では、沿岸に生息するメバル類等のCs濃度が低い実態を明らかにするとともに、福島県の重要魚種であるホシガレイやマアナゴのバイオロギング調査を行い、魚種ごとの移動範囲や季節ごとの行動特性を明らかにした。一方、内水面では、昨年度に引き続き原発周辺地域の渓流域や貯水池に生息する魚類(ヤマメ、イワナ、コイ、フナ等)の調査を行い、これらの魚種のCs濃度が海水魚に比べて依然として高く、Cs濃度の低下が遅い実態を明らかにした。得られた成果の一部については、学術誌等を通じて公表した。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度は、水産生物のCs汚染状況ならびに漁業の復興状況について、学会発表や地域活動懇談会等を通じて研究者や一般市民に向けて積極的に発信した。また、福島沖に生息するホシガレイの移動生態や、福島県に生息する淡水魚のCs汚染状況、震災後の阿武隈川で急増しているチャネルキャットフィッシュの生態特性に関する論文等を、学術誌を通じて公表した。以上のように、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
今年度に引き続き、福島県の沿岸漁業の復興状況や海産物のCs濃度が低下した現状について、科学論文や学会発表、一般向けの講演会などを通じて幅広く周知する。また、帰還困難区域や周辺水域における淡水魚の調査を継続し、Csのエサを介した魚類への移行について飼育試験や安定同位体比分析等も交えながら研究を推進する。
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