研究課題/領域番号 |
16H06201
|
研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
加藤 豪司 東京海洋大学, 学術研究院, 助教 (50624219)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 魚類免疫 |
研究実績の概要 |
ニジマスの鰓上皮には、浸漬投与したワクチン抗原を取り込む鰓上皮抗原取込(Gill epithelium antigen sampling(GAS))細胞が存在する。これまで、GAS細胞はレクチンの一種Ulex europaeus agglutinin 1(UEA1)に親和性を有すること、Aeromonas salmonicida subsp. salmonicida(A.s.s.)の不活化菌体を取り込むことの二点を利用し識別してきた。そこで本研究では、より簡便にGAS細胞を識別するために、モノクローナル抗体(MAb)を作出し、それを使用してGAS細胞の形態学的な特徴を解析した。ニジマスの鰓上皮から分離したUEA1陽性細胞をPFAで固定し、マウスに免疫した。常法によりハイブリドーマを作製し、UEA1およびSyto61で染色したA.s.s.不活化菌体で標識したGAS細胞を用いてスクリーニングを行った。また、鰓の凍結切片およびパラフィン切片を作製し、これらMAbを用いた蛍光免疫染色を行った。さらに、MAbを利用してGAS細胞を分取し、得られた細胞をMay-Grunwald Giemsa染色して観察した。ハイブリドーマのスクリーニングの結果、UEA1+A.s.s.+のGAS細胞に特異的に反応するMAb(2B4-1)を得た。2B4-1は、アセトンおよびPFAで固定した凍結切片だけでなく、パラフィン切片にも感度良く反応した。2B4-1で染色されたGAS細胞は、一次鰓弁と二次鰓弁の上皮組織、およびそれらの基部に多く観察された。2B4-1を用いて分画されたGAS細胞は、細胞質内に顆粒を多く含んでいた。このように、MAb 2B4-1を使用することで、GAS細胞の形態に関する詳細な解析が可能となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に予定していたGAS細胞に対するモノクローナル抗体の作製について、良好な結果を得た。作製したモノクローナル抗体は、生細胞だけでなく、アセトン固定した凍結切片、PFA固定した凍結切片、およびダビッドソン固定したパラフィン切片にも感度良く反応するものであり、今後の実験がより簡便に遂行可能だと考えられる。以上のことから、進捗状況の区分は「(2)おおむね順調に進展している。」とした。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、作成したモノクローナル抗体を用いて、GAS細胞の生理学的性状を明らかにしていく。まずは、抗体に反応する細胞集団を磁気細胞分離法で分取して、GAS細胞で発現している遺伝子群を網羅的に明らかにする。また、GAS細胞の抗原刺激に対する応答を、当該モノクローナル抗体を用いて解析する。
|