初年度に作製した抗ニジマスGAS細胞モノクローナル抗体を用いて、GAS細胞の抗原刺激に対する応答の解析を行った。まず、ニジマスにAeromonas salmonicida subsp. salmonicidaホルマリン不活化菌体を浸漬投与して、鰓上皮細胞を剥離した。剥離した鰓上皮細胞中の赤血球などをパーコール密度勾配遠心法で取り除き、磁気細胞分離法でGAS細胞の分取を試みた。市販の磁気細胞分離法について、いくつかの方法を試してみたが、いずれの方法を用いても目的細胞の純度が不十分であり、今後さらに条件検討が必要となった。一方で、これまでの実験では使用できなかったY. ruckeriを共同研究先から入手し、実験を行ったところ、Y. ruckeriもGAS細胞に取り込まれることを明らかにした。さらに、フローサイトメトリーによる細胞分取法でY. ruckeri不活化菌体を浸漬投与したニジマスの鰓上皮細胞からGAS細胞を分取したところ、十分な純度で細胞を採取することができた。採取したGAS細胞における抗原取込、抗原の消化、および抗原のプロセシングに関わる遺伝子群について遺伝子発現解析を行ったところ、浸漬1時間後までには大きな遺伝子発現の変化はないことが分かった。一方で、浸漬ワクチン処理後に、GAS細胞特異的に高発現する膜結合型タンパク質遺伝子を同定することができた。本遺伝子は、哺乳類のM細胞で抗原取込に関わる抗原レセプター遺伝子と類縁関係にあることから、今後解析を進めてきたい。
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