平成28-30年度の研究期間で実施予定であった若手研究(A)では、乳腺でのIgA産生を促す分子メカニズムを明らかにすべく、“乳腺側「呼び寄せる側」”と“IgA産生細胞側「呼ばれる側」”からの双方向研究を展開することで、乳腺での恒常的なIgA産生を可能にするワクチン接種プログラム開発に貢献することを目指した研究を実施してきた。本課題を通して、乳腺に遊走するIgA産生形質細胞は、CCR10と呼ばれるケモカイン受容体を発現しており「呼ばれる側の解析からの成果」、授乳期の乳腺は哺乳刺激依存的にCCR10のリガンドであるCCL28を高発現することで、IgA産生形質細胞を呼び寄せていることが明らかとなった「呼び寄せる側の解析からの成果」。さらには、授乳期の乳腺には、非常に発達した微生物叢が形成されていることも明らかになった。これらの研究成果は、粘膜免疫学の領域におけるトップジャーナルであるMucosal Immunology (Impact factor: 7.478)に掲載されるなど、当初の予定を遥かに上回る研究成果を得た。 今回、研究計画最終年度前年度応募で基盤研究(A)に採択され、平成30年度-33年度の4年間、若手研究(A)で得られた研究成果を飛躍的に発展させる機会に恵まれた。本基盤研究(A)では、乳腺での免疫微生物環境の形成機序を完全解明すべく、生体イメージング技術を用いた解析を実施する予定である。 以上の理由から、若手研究(A)の研究期間は2年間であったが、申請者が掲げる究極の課題である乳腺における免疫学・微生物学に立脚した乳房炎ワクチン開発に向け、研究を大きく前進させることができた。(補足:乳房炎とは、家畜の三大疾病の一つで、その経済損失は年間800億円と極めて甚大である。)
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