研究課題
植物バイオマスは光合成によって再生産可能な持続可能な資源である。樹木を含めた全ての維管束植物の細胞壁には芳香族高分子であるリグニンが存在し、多糖であるセルロース、ヘミセルロースと一緒に存在する。多糖とリグニンの分離は紙パルプの生産をはじめ、植物バイオマスから化成品やバイオ燃料を生産する上で最大の障壁である。しかし、リグニンと多糖間の結合について、これまでは化学分析法などの間接的な分析に留まっており明らかではない。本研究課題ではリグノセルロースの「結び目構造」に着目し、その強固な三次元ネットワークを「ほどく」反応系を構築しバイオマス変換におけるブレークスルーを目指す。本年度は、木材中からリグニン・多糖結合体を分離し、構造解析を行った。木材細胞壁中においてリグニンはヘミセルロース多糖を共存、複合体を形成しており、Lignin-Carbohydrate Compelex(LCC)と呼ばれている。木質からのLCCの効率的な抽出法、多糖分解酵素(ヘミセルラーゼ)との反応を検討した。また、多糖の種類、試料の疎水性、分子サイズの違いをイオン交換、疎水性相互作用、サイズ排除(分子ふるい)モードのクロマトグラフィーを利用して分離した。以上により、LC結合部の濃縮に成功した。続いて、2 次元、3 次元 NMR 法を用いて、リグニンと多糖間のエーテル型結合と周辺構造を連続的に解析した。その他の結合構造およびその分解系についても検討を進めた。関連する研究成果は国内学会、国際学会、シンポジウム講演、国際学術誌へ発表を行う。
2: おおむね順調に進展している
「結び目構造」モデルにおいて一部再検証が必要な構造が生じ、追加の実験が必要になったが、リグニン・多糖結合体の濃縮法を確立し、リグニン-多糖結合(LC結合)の構造解析に成功し、LC結合の周辺構造を含めて連続的に構造決定することができた。以上から概ね順調に進展している。
リグニンと多糖が酸素原子を介して共有結合(エーテル結合)していることを周辺構造を含めて構造決定することに成功した。今後、その他のリグニン多糖間結合、リグニンの分岐構造、および様々なの植物種におけるリグニン多糖間結合の解析を進める。さらにリグニン多糖間結合の分解系構築を進める。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (29件) (うち国際学会 8件、 招待講演 6件) 備考 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
Scientific Reports
巻: 8 ページ: 6538
10.1038/s41598-018-24328-9
生存圏研究
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http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2018/180425_5.html