研究課題
持続可能なエネルギー・有機資源の循環利用社会を実現するために、植物バイオマス全体の利活用推進が重要である。植物の細胞壁は芳香族高分子であるリグニンと、多糖であるセルロース、ヘミセルロースが共存し複合体を形成していて、Lignin-Carbohydrate Compelex(LCC)と呼ばれている。本研究課題ではリグノセルロースの「結び目構造」に着目し、その強固な三次元ネットワークを「ほどく」反応系を構築しバイオマス変換におけるブレークスルーを目指す。昨年度、リグニン-ヘミセルロース複合体(LCC)の高効率な分離・抽出法を見出しており、針葉樹バイオマスの混合試料からリグニン-多糖間をつなぐ結び目構造部を濃縮し、1H-13C HSQC(直接結合したC-Hの検出)および 1H-13C HMBC(2ー3結合離れた遠隔相関)、3次元TOCSY-HSQC などの多次元NMR 法を用いて,150年来の課題であった植物細胞壁内部の多糖とリグニン間の結合構造を周辺構造を含めて初めて解明し論文発表した。今年度は、広葉樹材におけるLCC結合の試料調製、構造解析を完了した。試料調製においては新しい方法として多糖分解酵素とリグニン分解酵素を用いた段階的な酵素処理法を検討し、新規LCCフラクションを取得することに成功した。本試料を用いて、多次元NMR 法による構造解析を実施し新たな知見を得た。
2: おおむね順調に進展している
新規のLCCフラクション取得法を検討し、試料調製、構造解析まで完了した。
新規LCCフラクションの構造解析中に新たな知見を得られたため追加の実験、分析も進める予定である。植物バイオマスの種類、部位のバリエーションについて、様々な原料をもちいた解析を行うことにより基盤的な知見を集積し、バイオマス変換反応の設計につなげる予定である。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 10件、 招待講演 2件) 図書 (3件)
Holzforschung
巻: 73 ページ: 1083~1092
10.1515/hf-2019-0011