研究実績の概要 |
日本の南極観測の拠点である昭和基地周辺では、担子菌酵母の一種Mrakia属菌が培養可能な菌類の優占種となっている。そこで、この地域の湖底堆積物及び土壌から約50株のMrakia属菌を分離し、菌類の分類に広く用いられているITS領域(Internal transcribed spacer)と26SrDNAのD1/D2領域の配列を基に種の同定を行った。その結果、これらの菌株はM. bollopis, M. gelida, M. robertiiの3種に分類することができた。取得した各菌株の至適増殖温度と-3℃での増殖速度を計測したところ、M. blollopis, M. gelida, M. robertiiそれぞれの種に低温での成長が優れている株とあまり成長しない株に分けることが分かった。そこで、それぞれの種から低温での成長能が異なる株を選抜し、全ゲノム解析を行った。その結果、低温での成長に優れた株はゲノムサイズが約30Mbであったのに対し、低温であまり成長しない株ではゲノムサイズが約60Mbと2倍大きいことが分かった。さらに低温であまり成長しない株ではペントースリン酸経路の遺伝子がの部分配列が繰り返し挿入されている可能性があることが分かった。
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