研究課題
中分子天然物は低分子・高分子医薬の優位性を併せ持つ次世代型ポストバイオ医薬として注目されている。しかしその化学構造の複雑さのため、中分子天然物を医薬品リードとして利用することは容易ではない。本研究では、高化学選択的ラジカル反応を鍵とした中分子天然物(バトラコトキシン、ナキテルピオシン、ベラトリジン)の実用的全合成経路確立を計画している。2018年度は主に、ナキテルピオシンの炭素骨格構築を検討した。ナキテルピオシンのCD環に相当する官能基化されたインダノン骨格を構築した。まず、3-ブロモ-2-メチル安息香酸に対して、酢酸パラジウム存在下、ジブロモメタンを処理しラクトンを合成した。ラクトンのカルボニル基に対してメチル基を付加させた後、酸化と続く分子内アルドール反応、および脱水によってインダノンを合成した。次いで、インダノンに対して様々な環状ジエンを作用させてDiels-Alder反応によるAB環構築を試みたが、大きな立体障害のため反応は進行しなかった。そこで、反応性の高いジエンであるRawalジエンを用いてDiels-Alder反応を行ったところ、トルエン中90度にて環化付加が進行し、ナキテルピオシンのBCD環を有する中間体を与えた。本検討により、効率的にナキテルピオシンの3環性骨格構築法を見出すことができた。
3: やや遅れている
上記に述べたように、ナキテルピオシンの3環性骨格の構築に際して、想像以上にインダノンの反応性が乏しくDiels-Alder反応の検討に時間を要した。結果的にはRawalジエンを用いる事でDiels-Alder反応を解決するに至ったが、一挙にABCD環を構築する計画であったものがBCD環の構築となった。またベラトリジンの合成研究にも着手したものの、その主要な骨格形成には至っていない。当初の計画では、ナキテルピオシンの全合成、ベラトリジンの骨格構築を予定していたが、現段階では当初の計画よりも遅れが生じている。
現在までにナキテルピオシンの3環性骨格の構築に成功しているため、今後は残りのA環構築を検討する。具体的には、Diels-Alder反応によって得られたBCD環にメチル基を導入した後、再度、RawalジエンによるDiels-Alder反応によって4環性骨格を合成する予定である。また同時に、ジクロロメチル基を有する特徴的な側鎖のモデル合成にも着手する。特にジクロロメチルアニオンを用いたSN2'反応による付加を検討し、効率的な側鎖合成法を確立する。合成するABCD環に対してモデル研究で確立する方法論を適用し、ナキテルピオシンの全合成を行う予定である。ナキテルピオシンの合成と共に、ベラトリジンの合成研究に着手する。C環に相当する官能基化された5員環に対して、炭素鎖を導入した後、分子内Diels-Alder反応によって一挙にABC環を構築する予定である。その後別途合成するEF環をカップリングさせ、主要骨格の合成を検討する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件) 備考 (2件)
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