研究課題
カベオリン1(cav1)遺伝子が欠損し、平滑筋のカベオラ構造が消失するcav1-KOマウスを用いて、カベオラ構造あるいはcav1が興奮-転写連関(E-T coupling)にどのように関与するか検討した。cav1-KOマウスの腸間膜動脈平滑筋において、E-T couplingの効率(脱分極刺激後のCREBのリン酸化の割合)および最初期遺伝子であるc-fosの発現が有意に減少した。メチルベータシクロデキストリン(MbCD)にてカベオラを破壊しても同様の変化か観察された。薬理学的な検討をした結果、電依存性Ca2+チャネル(VDCC)阻害薬やCaM依存性キナーゼキナーゼ(CaMKK)阻害薬によって、CREBのリン酸化およびc-fos発現誘導は有意に抑制された。一方で、CaM依存性キナーゼ2(CaMK2)阻害薬やリアノジン受容体阻害薬によるCREBリン酸化への影響は部分的であった。以上より、血管平滑筋においてカベオラはVDCCおよびCaMKKを局在化させて、CaMKK→CaMK1/4経路を介した脱分極刺激誘発性の遺伝子発現を制御することが示唆された。ジャンクトフィリン2(JP2)が収縮型血管平滑筋細胞において細胞膜と筋小胞体を結び付けて静止張力の維持に重要であることを明らかにした(論文投稿中)。また、血管平滑筋細胞を培養して増殖型に変化させるとJP2の発現が変化することが判明した。この発現変化が細胞内Ca2+シグナルを亢進させて、細胞増殖を制御することを見出した。ミトフュージン2(Mfn2)が増殖型平滑筋において、ミトコンドリアと筋小胞体を近接化させてカルシウムシグナルを効率化すること、これによりミトコンドリアでのATP産生が亢進して細胞増殖につながることを明らかにした。平滑筋細胞において、細胞膜・筋小胞体・ミトコンドリア内の局所的なカルシウムシグナルが筋張力制御のみならず、遺伝子発現や細胞増殖にも重要であることを明らかにした。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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