研究課題/領域番号 |
16H06216
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
相馬 洋平 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 特任研究員 (10565518)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アミロイド / ペプチド / タンパク質 / 凝集 / 阻害剤 / 結晶 / 触媒 / 創薬 |
研究実績の概要 |
本研究は、アルツハイマー病などのアミロイド疾患に対する新たな治療法の開発を目指し、アミロイドβ(Aβ)などのアミロイドタンパク質の凝集を抑制するための革新的な方法の開発を行うものである。 1)毒性本体に相当するAβオリゴマーは、凝集過程における中間体に相当し不安定であるため、構造ベースの創薬は不可能である。今回、Aβの一次構造から論理的に凝集阻害分子を導く。また、構造ベースでの阻害剤デザインを可能にすべく、有機合成化学の力でAβの毒性オリゴマーの結晶構造を解く。2)体内環境に存在する分子酸素を酸素原子源とし、触媒反応によりAβを酸素化および無毒化する人工触媒を開発する。高いアミロイドタンパク質選択性を実現し、個体レベルで治療効果を実証することを目標とする。 これまでに、Aβ16-20 (Lys-Leu-Val-Phe-Phe)を環状化した環状ペプチド誘導体における研究から、全長Aβに対して凝集阻害活性を発現することのできるファーマコフォアを同定している。今回、ピリジンーイミダゾールからなるスカフォールド骨格に対して本ファーマコフォアを配置した低分子化合物が、Aβに対して強い凝集阻害活性を示すことを見出した。 毒性オリゴマーの結晶構造獲得を目指し、環状ペプチド骨格にAβ鎖を結合させた化学連結型三量体を合成した。環状ペプチド骨格中に静電反発を誘起するカルボン酸ユニットを導入することにより、毒性などのアミロイド凝集中間体としての性質を維持しつつ、オリゴマー同士の分子間相互作用を抑制し凝集性を低減することができた。 組織透過性が高く傷害性の低い近赤外光により励起可能な酸素化触媒を開発することに成功した。本触媒は、凝集した毒性Aβが存在するときのみ選択的に活性を発現し、細胞存在下や疾患モデルマウス由来の脳ライセート中において、選択的に凝集Aβを酸素化することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Aβに対する低分子型凝集阻害剤、立体構造解析を指向した毒性Aβオリゴマーの安定人工ミミック、個体レベルで機能するアミロイドタンパク質に対する酸素化人工触媒のいずれについてもリードとなる化合物の創出に至っており、順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
細胞レベルで機能する凝集阻害剤の創出を目指し、ピリジンーイミダゾールからなるスカフォールド骨格に対して、ファーマコフォアを配置した一連の化合物を引き続き合成する。化合物の迅速な供給を目指し、合成法の高効率化も検討する。 環状ペプチド骨格中における酸官能基の種類や数を検討することにより、より強力に凝集性を低減することのできる誘導体を模索する。望ましい環状ペプチド骨格を採用し、Aβ鎖の数を増やすことにより、四~六量体を合成し凝集性や毒性などを評価する。 800 nm以上の長波長光で活性化可能な触媒を開発する。アルツハイマー病モデルマウスを用い、触媒が脳内に凝集したAβに対し光酸素化反応を促進するかどうかについて検討する。
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