研究実績の概要 |
本研究課題では、酵素によって容易に加水分解されるペプチド結合を、 結合の長さと角度がよく似た炭素-炭素二重結合に置換したアルケン型ペプチド結合等価体の特性を活用し、ペプチドの易水解性や代謝、凝集に起因する問題を解決することを目的としている。平成30年度は、以下に示す二つの研究課題を実施した。
【①α,α-ジクロロ-β-アミノ酸の化学合成法の最適化】平成29年度の検討によって顕在化したα,α-ジクロロ-β-アミノ酸の合成段階における副生成物の単離・構造決定に成功し、本化合物がEllmanイミンからのAza-Darzens反応によって得られるアジリジン体であることを明らかにした。反応条件を最適化することで、β-アミノ酸を選択的に得ることに成功し、クロロアルケン型ペプチド結合等価体のマルチグラムスケール合成が可能になった。また、Aza-Darzens反応によって得られるアジリジンが高度に官能基化されていることに着目し、本化合物を鍵中間体とすることで、従来法では合成困難なα,α-二置換アミノ酸を含むクロロアルケン型ペプチド結合等価体の立体選択的合成法の開発に成功した。
【② クロロアルケン骨格のペプチド結合等価性の評価】平成29年度の検討によって、アミロイド線維を形成可能なヘプタペプチド (Ac-KLVFFAE-NH2) において, 凝集に特に重要なペプチド結合をクロロアルケン骨格に置換することで, アミロイド線維のモルホロジー制御につながる新たな分子的基礎を得ている。そこで、平成30年度はアミロイド線維のモルホロジー制御の起点となるクロロアルケン骨格の特性を明らかにするため, 塩素原子の水素結合模倣能に関する詳細な機能解析を行い、クロロアルケン骨格の塩素原子が同一アミノ酸内のアミドプロトンとカルボニル酸素が形成する分子内水素結合 (p型水素結合) をミミック可能であることを明らかにした.
|