研究課題
中枢関門の薬物透過機構を解明することは、中枢疾患治療における長年の重要課題である。本研究では、最新の超網羅的プロテオミクス技術を用いて、中枢関門を介した物質輸送に寄与するトランスポーター群を新規に同定することを目的とした。平成28年度に、トランスポーターを網羅的に探索するための網羅的プロテオミクス手法「SWATH法」の解析系を構築することに成功したため、平成29年度は、それを用いて血液脳関門に発現するトランスポーターの探索を行った。その結果、複数のSLCトランスポーターが候補として同定された。また、膜貫通部位数などの構造的情報を組み合わせることによって、機能未知の膜タンパク質をトランスポーター候補として絞り込んだ。候補トランスポーターについて、ヒト脳毛細血管内皮細胞株(hCMEC/D3細胞)におけるタンパク質絶対発現量を決定した。高発現量分子について、強制発現細胞の構築が完了し、輸送解析を行っているところである。血液脳関門に加えて、中枢組織の広範囲の外表面を覆う血液クモ膜関門についても網羅的にトランスポーターの探索・定量を行ったところ、OAT1、OAT3、MATE1、OCT2などの多くの薬物輸送トランスポーターがタンパク質レベルで発現することを初めて明らかにし、さらに、それらが高発現するという興味深い結果を得た。OAT1およびOAT3については、有機アニオン性物質の脳脊髄液からの排泄に関与することがin vivo(大槽内投与)実験によって示された。血液クモ膜関門は脳脊髄液全体の約8割と接しており、脈絡叢が支配する脳室内の脳脊髄液の体積(約2割)よりも顕著に大きい。従って、上記の結果は、血液脳関門に加えて血液クモ膜関門も中枢組織の薬物濃度の制御に重要な役割を担っている可能性を示唆している。結論として、本年度は、血液脳関門及び血液クモ膜関門において有望なトランスポーター(候補)分子を複数同定することに成功した。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた通りに、トランスポーター探索に必要な網羅的なSWATH解析系を構築し、それを用いて複数のトランスポーター候補分子を絞り込むことができたため。
トランスポーター候補分子の強制発現細胞あるいはknockdown細胞を用いて、in vitro輸送解析によって候補分子が薬物・化合物輸送を担うトランスポーターであるか否かを検証する。
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