研究課題
2年目までの研究において、トランスポーターを網羅的に探索するための網羅的プロテオミクス手法「SWATH法」の解析系を用いてブタの血液脳関門に発現するトランスポーターの探索を行った。その結果、複数のトランスポーター候補が同定された。候補分子について、順次、輸送機能解析を進めているが、効率よく高活性のトランスポーターを同定することができなかった。そこで、SWATH法の改良検討を行った結果、網羅的に、タンパク質絶対発現量を決定することのできる「quantitative Global Absolute Proteomics (qGAP)法」を開発することに成功した。また、美原記念病院ブレインバンクとの共同研究を本格的に開始することができたため、ヒトの脳組織から高純度に脳毛細血管を単離でき、その膜画分を調製できた。そこで、qGAP法を、この血液脳関門の膜画分に適用した結果、ブタでは探索されなかった複数のタンパク質の発現が新たに検出され、絶対発現量を決定することができ、機能解析を行う上での優先順位をつけることができた。ヒト脳毛細血管内皮細胞株(hCMEC/D3細胞)あるいは強制発現細胞を用いた輸送解析を行った結果、有機カチオン性薬物の取り込み輸送を担うタンパク質を絞り込めた可能性があり、現在、各種検証実験を行っている。また、プロテオミクスに基づく網羅的探索・定量手法の開発によって、Claudin-11やCD46がヒト血液脳関門における密着結合や輸送に重要であることやP糖タンパク質の機能制御メカニズムを包括的に解明でき、論文発表することができた。
1: 当初の計画以上に進展している
複数のトランスポーター候補分子からの絞り込みが課題であったが、新規手法の開発によって合理的に優先順位を決定することができ、トランスポーター探索の突破口を拓いたため。ヒト血液脳関門における新規分子の同定に成功し、その機能やメカニズムを解明でき、ヒト血液脳関門における新たな分子機構を発見できたため。
トランスポーター候補分子について更なる機能的な検証実験を進め、血液脳関門における薬物輸送への寄与を証明する。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 4件、 招待講演 5件) 備考 (1件)
J Cereb Blood Flow Metab
巻: - ページ: -
10.1177/0271678X18822801
Mol Pharm
10.1021/acs.molpharmaceut.8b00975
10.1021/acs.molpharmaceut.8b00985
Mol Neurobiol.
巻: 56(3) ページ: 2039-2056
10.1007/s12035-018-1207-5
ファルマシア
巻: 55 ページ: 320-324
巻: 55 ページ: 335_3
Drug Metab Dispos
巻: 46 ページ: 1767-1775
10.1124/dmd.118.081877
薬剤学「最近のトピックス」
巻: 78 ページ: 228-234
http://www.pharm.tohoku.ac.jp/~soutatsu/dds/profile/uchida.htm