研究課題/領域番号 |
16H06219
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山梨 義英 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20582018)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 脂質トランスポーター / 消化管吸収 / 動脈硬化症 |
研究実績の概要 |
ABCG5/G8とNPC1L1はステロールの消化管吸収を制御するトランスポーターとして同定され、互いに逆方向の輸送を担う。申請者の研究から、これらトランスポーターはステロールのみならず様々な脂質・脂溶性栄養素の消化管吸収も制御し、動脈硬化症などの脂質関連疾患の発症に深く関わることが明らかとなってきたが、その全体像の解明には至っていない。そこで本研究は、ABCG5/G8とNPC1L1の生理的基質を網羅的かつ定量的に探索・同定し、両輸送体の活性バランスに基づいた脂質吸収制御メカニズムの体系的理解を目指すこととした。また、同定された新規基質が動脈硬化症の発症・進行に及ぼす影響を明らかにすることで、脂質の体内動態と生理活性を考慮した、病態生理学的に真に影響力の強い新たな治療標的脂質を見出すことも目指している。 研究二年度目にあたる平成29年度は、昨年度に実施したマウス血液サンプルを用いた網羅的解析から見出されたNPC1L1の基質候補について、NPC1L1の輸送活性をNPC1L1高発現細胞を用いたin vitro取り込み実験により検討した。その結果、複数の脂溶性物質に対してNPC1L1が輸送活性を有することが明らかとなった。また、動脈硬化症における各ステロールトランスポーターの影響について検討したところ、動脈硬化症モデルマウスとして汎用されているLDL受容体機能欠損マウスに高脂肪食を20週間与えることで、腹部大動脈に動脈硬化巣(プラーク)の形成が認められた一方で、LDL受容体機能欠損マウスとNpc1l1遺伝子欠損マウスを掛け合わせたマウスでは、プラークの形成が顕著に抑えられており、動脈硬化症の発症・進行にNPC1L1が重要な役割を担うことが明らかとなった。さらに、各マウスから採取した血液を詳細に解析した結果、NPC1L1依存性のリポタンパク質分画を見出すことに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NPC1L1の新規基質を複数見出すことに成功したため。また、動脈硬化症モデルマウスの解析からNPC1L1が動脈硬化症の発症・進行に重要な役割を担うことが明らかとなったため。
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今後の研究の推進方策 |
研究三年度目となる次年度(平成30年度)は、平成29年度までに明らかとなったABCG5/G8やNPC1L1の新規基質の消化管吸収について、各ステロールトランスポーターの遺伝子欠損マウスを用いた経腸投与実験により、両トランスポーターの生理的役割を検討する。また、これら基質が動脈硬化症の発症・進行にどのような影響を及ぼすのか解析を進める。あわせて、平成29年度に見出されたNPC1L1依存性のリポタンパク質について、プロテオーム解析やメタボローム解析を駆使した性状解析を行うとともに、動脈硬化症に及ぼす影響について検討する。また、ヒトにおける新規基質と動脈硬化症の発症・進行との関連性を解析するために、昨年度までに取得したヒト血液検体の脂質濃度解析を進める。
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