研究課題/領域番号 |
16H06223
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山口 新平 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (80740795)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ES細胞 / インプリンティング |
研究実績の概要 |
胚盤胞からのES細胞樹立の機構を解析するため、インプリンティングに着目して以下の研究を遂行した。 ① ES細胞樹立時のインプリンティングの動態と機構:雌性および雄性単為発生胚と、それらの胚からのES細胞樹立過程を対象に、遺伝子発現変化を解析した。その結果、胚盤胞の培養1週間という比較的短期間にインプリンティングの破綻が生じ、特に雄性発現遺伝子の両アレル性発現が生じていた。さらに、このとき両アレル性発現を獲得する父性アレル発現遺伝子をノックダウンするとES細胞の増殖が顕著に低下することも見出した。これらの遺伝子が両アレルから発現することで、発現量が増加し、ES細胞の増殖がさらに進行することが示唆されている。また、このインプリンティング遺伝子の発現をリアルタイムで観察できるレポーターマウスの樹立を行った。 ② インプリンティング破綻しないES細胞樹立の試み:ES細胞細胞の樹立・維持には分化に機能するMEKとGSK3bの阻害剤(2i)が用いられるが、2iはエピジェネティック修飾にもゲノムワイドな影響を与えることが明らかになっている。そこで、2iのうち、特に、DNAメチル化転移酵素の発現に関連するMEK阻害剤の使用を最低限にした、新規のES細胞樹立・維持方法の開発を試みた。いくつかの阻害剤を用いない培養方法を試行したところ、MEK阻害剤を用いず、GSK3b阻害剤を減量した培養条件(LowGiL条件)でもES細胞が維持可能なことを見出した。一方で、LowGiL条件ではES細胞の樹立は不可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ES細胞樹立過程で破綻するインプリンティング遺伝子の同定、機能解析などは順調に推移している。また、インプリンティング遺伝子発現をモニターできるレポーターマウスの樹立は成功した。インプリンティングを維持したES細胞樹立の試みも順調に進行しており、LowGiL条件という新規のES細胞維持手法を発見した。この条件は、ES細胞の樹立は不可能だが維持は可能という特徴を有しており、この研究を進展することでES細胞の樹立機構の一端を明らかにできると考えている。Tet1欠損マウスを用いた実験は、交配の効率の問題などから若干遅れているが、全体としては、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
ES細胞におけるインプリンティング遺伝子の機能を明らかにするため、複数の遺伝子を組み合わせた機能欠損ES細胞の樹立などを試みる。また、Tet1欠損マウスやレポーターマウスを用いたES細胞細胞樹立の解析も粛々と進める計画である。さらに、LowGiL法で樹立したES細胞や、樹立過程で生じている遺伝子発現プロファイルを網羅的に解析する計画である。
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