研究課題/領域番号 |
16H06231
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
佐藤 好隆 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (40754940)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | HSV / ハプロイドスクリーニング / ウイルス感染 |
研究実績の概要 |
単純ヘルペスウイルス(HSV)はヒトに口唇ヘルペス、脳炎、性器ヘルペス、眼疾患といった多様な病態を引き起こし、関連する医療費はアメリカ合衆国で年間30億ドルと試算される臨床上重要なウイルスの一つである。しかし、HSV感染の病態は未だ不明な点も多い 。その理由として、これまでのHSV研究では(1)順遺伝学的 アプローチによる宿主因子の網羅的な解析が困難であったこと、および(2) ウイルスの侵入やウイルスゲノム複製というウイルス増殖の各ステップに焦点を当てた研究が多かったため、ウイルス感染や病態発現機構の全体像に迫ることが困難であったことが挙げられる。本研究ではハプロイド細胞による順遺伝学的スクリーニングと次世代シーケンス解析を組み合わせることでこれらの問題を克服し、HSV感染および病原性発現機構の分子基盤を明らかにすることを目的としている 。 2018年度は、パイロットスクリーニングからスクリーニングの規模を拡大し、ゲノムワイドスクリーニングを実施した。当初計画していたgene trap法によるKOライブラリーの作成に加えて、CRISPRレンチウイルスを使用したKOライブラリーも作成し、両ライブラリーを用いて、HSV感染に抵抗性を示す細胞集団を得た。これらを次世代シーケンサーで解析し、欠損している遺伝子を網羅的に同定し、ある物質の生合成に関わる一連の遺伝子群(未発表のため遺伝子名は伏せる)を同定出来た。それ以外にも、これまでHSVとの関係が報告されていない細胞膜に局在するタンパク質が3つ同定され、HSV感染の新たなレセプターである可能性も示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度はゲノムワイドスクリーニングの実施に成功した。スクリーニングによって、HSV感染に抵抗性を示す細胞集団を得て、これらを次世代シーケンサーで解析することで欠損している遺伝子(責任遺伝子)を網羅的に同定した。HSVに抵抗性を示す宿主因子として、ある物質の生合成に関わる一連の遺伝子群(未発表のため遺伝子名は伏せる)を見出すことができた。これらの遺伝子をKOした細胞を作成し、HSVを感染させると、HSV感染に対して抵抗性を示し、スクリーニングが有効に機能していることが示された。さらに、これまでHSVとの関係が報告されていない細胞膜に局在するタンパク質が3つ同定され、これらはHSV感染の新たなレセプターとなり得る可能性があり、今後の生化学的・細胞生物学的な解析でその詳細が明らかになることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度に実施したゲノムワイドスクリーニングで同定された宿主因子群の機能解析を中心に、2019年度の研究を推進する。具体的には以下の2つを計画している。 1)ある物質(未発表のため物質名は伏せる)の合成を阻害したり、分解したりするような酵素・小分子化合物がHSVの感染を阻害するかをin vitroで検証する。 2)これまでHSVとの関与が報告されていない膜タンパク質がウイルスのエントリーレセプターとして機能するかどうかを、生化学的に検証していく。また、ゲノム編集によりこれらの膜タンパク質をKOした細胞を作成し、HSV感染に対する表現型を観察する。 得られた結果に応じて適宜計画を見直し、研究を推進し、学会や国際誌に結果を報告する。
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