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2017 年度 実績報告書

骨髄造血の恒常性維持を担うニッチの動態と機能の解析

研究課題

研究課題/領域番号 16H06232
研究機関大阪大学

研究代表者

尾松 芳樹  大阪大学, 医学系研究科, 助教 (80437277)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード造血幹細胞 / ニッチ / CAR細胞 / Foxc1 / Ebf3
研究実績の概要

造血の恒常性は骨髄に存在するニッチと呼ばれる特殊な微小環境によって高度に維持されており,申請者らのこれまでの研究により,ケモカインCXCL12を高発現する細網細胞(CAR細胞)が,造血幹細胞・前駆細胞の維持に必須のニッチを構成する特別な間葉系前駆細胞であること,およびその形成と維持に転写因子Foxc1が必須であることが明らかになった.そこで本研究ではCAR細胞の機能と動態に着目し,骨髄造血の恒常性がどのようにして維持・制御されているのかを解明することを目的としている.
初めにCAR細胞に特異的に高発現するFoxc1以外の転写因子として新たにEbf3を同定した.そこでまずはEbf3-CreERT2マウスを作製し,Creレポータマウスと交配することでこのマウスが骨髄ではCAR細胞特異的にCreを発現することを確認したので細胞系譜解析を行った.その結果,CAR細胞が自己複製し,骨髄の大部分の骨芽細胞と脂肪細胞を生み出す間葉系幹細胞であることを証明した.次にCAR細胞におけるEbf3の機能を解析するためにEbf3および近縁な遺伝子であるEbf1について,コンディショナルノックアウトマウスを作製し解析を行った.その結果,転写因子Ebf1/3はCAR細胞の骨芽細胞への分化を抑制し,骨髄腔の維持と造血幹細胞ニッチの形成・維持に必須であることが明らかになった.
続いてCAR細胞に必須の転写因子Foxc1およびEbf1/3によって制御される遺伝子や,Foxc1およびEbf1/3の発現を誘導する遺伝子のスクリーニングを培養細胞等を用いた機能解析等によって行っている.得られた候補遺伝子のCAR細胞における機能を解明するためコンディショナルノックアウトマウスの作製を計画し,造血の恒常性維持に必須の新規造血制御因子の同定を目指している.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

造血幹・前駆細胞の主たるニッチ細胞であるCAR細胞に特異的に発現するFoxc1以外の転写因子として新たにEbf3を同定した.Ebf3発現細胞に薬剤でCreリコンビナーゼを作用できるEbf3-CreERT2マウスの作製を行い,レポータマウスと交配することでCAR細胞の細胞系譜解析が可能となった.解析の結果,ほとんど全てのCAR細胞は長期(13ヶ月)にわたってレポータ陽性であること,また骨芽細胞や骨髄内脂肪細胞もレポータ陽性になることが明らかになった.次にCAR細胞におけるEbf3の機能を解析するために,Ebf3および近縁な遺伝子であるEbf1について,コンディショナルノックアウトマウスを作製し解析を行った.その結果,CAR細胞でEbf1/3を欠損させると骨髄が骨で埋め尽くされ,造血が著しく障害されることが明らかになった.以上より,Ebf1/3はCAR細胞の骨芽細胞への分化を抑制し,骨髄腔の維持と造血幹細胞ニッチの形成・維持に必須の転写因子であることが明らかになった.
転写因子Foxc1およびEbf1/3によって制御される,造血の恒常性維持に必須の新規造血制御因子を同定するため,Foxc1およびEbf1/3のコンディショナルノックアウトマウスから残存するCAR細胞を単離し,野生型マウスのCAR細胞と遺伝子発現を比較した.その結果,Foxc1およびEbf1/3が制御する新規造血制御遺伝子の候補を複数同定した.そこで,これら遺伝子の機能解析を培養細胞に強制発現させる等の方法で検討を行っている.また同時にその遺伝子がCAR細胞の造血支持能に重要であるか否かをコンディショナルノックアウトマウスを用いて検討するために,floxマウス作成に着手している.さらに薬剤(ドキシサイクリン)によってCAR細胞特異的にFoxc1遺伝子の発現を誘導できるようなトランスジェニックマウスを作製しつつある.

今後の研究の推進方策

これまでの研究によって,主たる造血ニッチ細胞であるCAR細胞の発生および機能の維持に必須の転写因子Foxc1とEbf1/3が明らかになった.しかしながらこれらの転写因子によって発現が誘導されることが示されている造血ニッチ能に重要な遺伝子はCXCL12とSCFのみであり,これら以外にも重要な下流の遺伝子が存在すると考えられる.Foxc1およびEbf1/3のコンディショナルノックアウトマウスを用いたスクリーニングによりいくつかの候補遺伝子を得たので,floxマウスを作成し,これら候補遺伝子の機能の解明を目指す.さらに転写因子Foxc1とEbf1/3の発現を上昇させる細胞内外のシグナルの探索および機能解析を行い,CAR細胞の発生においてこれらの転写因子の発現が上昇する分子機構を,さらにはCAR細胞が他の間葉系前駆細胞から運命決定されるメカニズムの解明を目指す.
また,造血の異常を来す種々のストレスに応答してCAR細胞の遺伝子発現が大きく変化することが観察された.この発現変動遺伝子は造血の回復に対して正もしくは負の効果をもたらす可能性が考えられる.そこでその機能解明のために当該遺伝子の欠損マウスを用いた実験を計画している.またFoxc1も種々のストレスに応答して発現が低下することが明らかになったため,薬剤でFoxc1の発現を誘導できるマウスを作製し,ストレス下でFoxc1の発現を増強することでCAR細胞の変質が抑制できるか否か,また造血の回復が有意に高まるか否かを解析する.

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] Stem cell niche-specific Ebf3 maintains the bone marrow cavity2018

    • 著者名/発表者名
      Seike Masanari、Omatsu Yoshiki、Watanabe Hitomi、Kondoh Gen、Nagasawa Takashi
    • 雑誌名

      Genes & Development

      巻: 32 ページ: 359~372

    • DOI

      10.1101/gad.311068.117

    • 査読あり

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公開日: 2018-12-17  

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