研究課題
自己免疫疾患の炎症維持機構の包括的な分子基盤の理解は、次世代の予防法、治療法開発の基礎となり生命科学研究の重要課題である。しかしながら、炎症標的組織中で起こっている複雑な炎症ネットワークを形成する構成因子に関しては不明な点が多い。本研究では、自己免疫性関節炎の炎症組織局所に存在する炎症性Tヘルパー(Th)細胞、滑膜細胞、自然免疫細胞による病態発症・慢性化機構に焦点をあてた研究を展開している。本年度、高い関節炎惹起能を有するGM-CSF産生細胞の詳細な細胞分画解析をおこない、関節炎症局所ではTヘルパー細胞、滑膜細胞、自然免疫細胞が主要な産生細胞であることを同定した。次に、関節炎惹起性SKG CD4 T細胞移植モデルを用いて、GM-CSF産生細胞分画の病態惹起能について解析をおこない、興味深い知見として、他の自己免疫病モデルでは定説になりつつある病態惹起性GM-CSF産生Tヘルパー細胞が、SKG自己免疫性関節炎モデルでは必須の役割を果たさないことを明らかにした。逆に、非T細胞系列細胞が産生するGM-CSFが自己免疫性関節炎発症に重要な役割を果たすことを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題では、炎症組織局所に存在する炎症性Tヘルパー(Th)細胞、滑膜細胞、自然免疫細胞による病態発症・慢性化機構の分子基盤の確立を目指すことにより、自己免疫疾患に対する新しい免疫学的制御法の開発を目的とする。本年度の成果、即ち、炎症局所におけるGM-CSF産生細胞の詳細な細胞分画と病原惹起能に対する役割解明はこれらの細胞及び分子機構を標的とした免疫制御法の基礎となる可能性があり、期待した研究の進展が認められた。
平成29年度は、28年度の研究計画の継続に加えて、自己免疫性関節炎発症に必須の役割を果たすGM-CSF産生滑膜細胞と自然免疫細胞による病態貢献度とGM-CSF産生制御機構について研究を展開する。具体的には、GM-CSF欠損滑膜細胞またはGM-CSF欠損自然免疫細胞を再構築した骨髄キメラマウスを作製し、GM-CSF欠損SKG CD4 T細胞を養子移入することによって、滑膜細胞と自然免疫細胞のGM-CSF産生による病態惹起能と関節炎重症度に関して評価する。また、滑膜細胞、自然免疫細胞とTヘルパー細胞との細胞間相互作用に関わる因子とGM-CSF制御メカニズムについて研究を展開している。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Nat Immunol.
巻: 18 ページ: 173-183
10.1038/ni.3646.
Arthritis Rheumatol.
巻: 68 ページ: 2646-2661
10.1002/art.39783.
最新医学
巻: 71 ページ: 2320-2325