研究課題/領域番号 |
16H06233
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
廣田 圭司 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 准教授 (90631250)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Th17 / 自己免疫性関節炎 / GM-CSF |
研究実績の概要 |
自己免疫疾患の炎症維持機構の包括的な分子基盤の理解は、次世代の予防法、治療法開発の基礎となり生命科学研究の重要課題である。しかしながら、炎症標的組織中で起こっている複雑な炎症ネットワークを形成する構成因子に関しては不明な点が多い。本研究では、自己免疫性関節炎の炎症組織局所に存在する炎症性Tヘルパー(Th)細胞、滑膜細胞、自然免疫細胞による病態発症・慢性化機構に焦点をあてた研究を展開している。本年度、骨髄キメラマウスおよび自然リンパ球(ILCs)を抗体投与によって除去する疾患モデルマウス作製し、炎症関節滑膜に常在するILCsが炎症反応により増殖し、ILCsの産生するGM-CSFがTh17細胞依存的関節炎発症に必須の因子であることを見いだした。また、滑膜ILCsの試験管内培養系を確立し、ILCsのGM-CSF産生刺激因子(DAMPs:ダメージ傷害関連分子パターン)を同定した。滑膜ILCsは、IL-2受容体、IL-33受容体、TLR9を発現しており、IL-33とIL-2の共刺激またはIL-33とTLR9リガンドの共刺激によって、ILCsのGM-CSF産生が増大した。同様に、滑膜細胞の産生するGM-CSFも関節炎の発症、重症化に重要な炎症メディエーターであった。その制御機構として、関節炎発症初期、Th17細胞の産生するIL-17がIL-17受容体を高発現する滑膜細胞に作用し、炎症性サイトカイン・ケモカインを誘導する。特に、この時に産生するGM-CSFが関節炎発症、重症化に必須の因子であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、炎症組織局所に存在する炎症性Tヘルパー(Th)細胞、滑膜細胞、自然免疫細胞による病態発症・慢性化機構の分子基盤の確立を目指すことにより、自己免疫疾患に対する新しい免疫学的制御法の開発を目的とする。本年度の成果、即ち、ILCsおよび滑膜細胞が産生するGM-CSFが関節炎発症、重症化に必須の因子であることを突きとめた。また細胞特異的なGM-CSF制御機構の解明はこれらの細胞及び分子機構を標的とした免疫制御法の基礎となる可能性があり、期待した研究の進展が認められた。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、29年度の研究計画の継続に加えて、自己免疫性関節炎発症に必須の役割を果たすGM-CSF産生自然免疫細胞について以下の解析を進める。炎症滑膜だけでなく、非炎症滑膜にもILCsは常在しており、これらILCsサブセットについて解析をおこなう。また、これらILCsの性状が系統間の遺伝的背景によって影響を受けるかどうか、関節炎モデルを用いて解析する。滑膜の炎症ILCsの維持機構、増殖マーカーの解析をおこない、分化増殖に関わる組織分布について検討をおこなう。
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