本研究の目的は、要介護高齢者とそれを取り巻く家族、地域社会、介護保険制度の相互作用を明らかにし、将来の我が国の介護状況に向けた3者のバランスのあり方を検討することである。このために、マクロレベル解析による家族介護のトレンド把握、脆弱介護状況として、多重介護、老々介護、独身子ども介護にある高齢者と介護者を対象にしたミクロレベルでの実態把握、これらの知見を基にした国際的実態比較を実施した。 本年は、家族介護の将来予測として国民生活基礎調査を持ちいた家族介護者のトレンド解析に加えて、独居高齢者及びその別居による家族介護状況の解析、脆弱介護状況(多重介護、老々介護、独身子ども介護)の実態把握として、家族介護者らを対象にした、インタビュー調査を実施し、男性介護者等、脆弱な介護状況にある家族介護者らの状況を把握した。さらに、米国、ノルウェー、香港らの共同研究者らとのディスカッションにより、家族への扶養意識の違いや、社会保障制度の違いによる、高齢者や介護を担う家族への公的・私的介護施策のバランスについて検討を行った。
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