前年度に候補を絞った脊髄新規痒み物質の発現細胞を特定するために、痒み物質のプロモーター依存的に標識タンパク質を発現するマウスを作成し、脊髄の免疫染色を行った。その結果、脊髄の後角に発現が見られることがわかった。神経細胞マーカーとの共局在が認められたことから、神経細胞に発現していることも分かった。さらに、同マウスを用いて慢性掻痒モデルを作成し、脊髄後角の神経の活動を評価したところ、痒み物質陽性神経で活動が亢進していることが分かった。また、痒み物質プロモーター依存的にジフテリア毒素の受容体を発現するマウスを作成し、ジフテリア毒素を髄腔内投与したところ、物質の発現が抑制され陽性細胞の除去を確認できた。このマウスにおいて既知の痒み伝達物質及び受容体であり、脊髄後角神経に発現しているGRP及びGRPRの発現を検討したところ、通常マウスと比べて変化が見られなかったことから、GRP及びGRPRを発現している神経細胞とは異なる細胞に新規痒み物質が発現していることが示唆された。以上平成29年度の結果から、新規痒み伝達物質は脊髄後角神経細胞に発現しており、その陽性細胞はGRP及びGRPR発現神経細胞とは異なる細胞であること、また慢性掻痒時には新規痒み物質陽性細胞の活動が亢進していることが示唆された。これらの結果は新規痒み物質が脊髄においてGRP-GRPRシグナル非依存的に痒みを誘発し、慢性掻痒に寄与する可能性を高めると考えられる。
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