研究課題
肺炎は死亡原因の3番目に位置し、その96.9%が65歳以上の高齢者である。高齢者の肺炎の主な原因は誤嚥であり、加齢に伴う口腔・嚥下機能の低下により引き起こされる。高齢化が急速に進むわが国では、高齢者の肺炎及び口腔・嚥下機能低下への予防対策は日常的に取り組むべき重要課題の一つであるものの、それらの日常生活環境との関連については明らかではない。本研究では、離島の高齢者を対象に、舌圧測定による口腔機能の評価とソーシャルネットワーク・ソーシャルサポートを含めた生活環境を調査することにより、高齢化が著しく介護・医療資源が限られた離島地域での誤嚥性肺炎予防および口腔機能維持に影響する要因を複合的に明らかにすることを目的とする。口腔機能が嚥下機能のみならず、平衡感覚の維持などの身体活動やコミュニケーション手段として重要である点に着目し、高齢者の口腔機能維持の阻害または促進因子を、多角的に明らかにする。初年度である平成28年度は、自治体の協力を得て調査対象地域の選定を行い、対象地域でのデータ収集体制の確立と調査の実施を行った。対象地域に居住する高齢者全員を対象とした同調査では、8割以上の住民から参加同意を得た。参加者には、質問紙による生活環境と健康に関する詳細な情報収集と、舌圧測定による口腔機能の把握等客観的な評価指標の収集を行い、収集した情報を用いてデータベースを作成した。現在、クリーニング作業と集計作業を進行中である。今後、追加・追跡データの収集と、初年度収集情報の分析を進め、論文化を行う。なお、本調査では、平行して行った地域健診受診者対象の別研究プロジェクトにおいて、生活環境と舌圧値が有意に関連した分析結果を踏まえ、より詳細な情報収集に繋げることができた。今後も口腔機能に関する多角的な検証を行うと共に、全数調査という本調査の特徴を生かし、他の疫学データとの比較・検証を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
初年度の計画通り、地域の選定、データ収集体制の確立、全対象者へ調査を実施し予定通り終了したこと、および、8割以上の対象者より同意取得と情報収集を得て、データベース作成も完成していることから、おおむね順調に進展していると考えられる。
初年度は計画通り順調に進展していることから、当初の研究計画に沿って本研究課題を推進する。ただし、初年度の参加状況を踏まえ、調査票の配布時期、調査の実施時期・方法の調整を行い、研究参加率の維持・向上を図る。また、初年度データの基礎分析結果を踏まえ、調査内容の修正に役立てる予定である。さらに、本研究目的の達成に有効である場合、他の疫学データとの比較・連携を行う予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (14件) (うち国際共著 2件、 査読あり 14件、 謝辞記載あり 14件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (6件)
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