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2017 年度 実績報告書

死因究明における死後MRI検査の有用性の検討

研究課題

研究課題/領域番号 16H06242
研究機関東京大学

研究代表者

槇野 陽介  東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 准教授 (50725017)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワード法医学 / 核磁気共鳴画像 / 死因究明 / 死後CT
研究実績の概要

当研究は法医解剖前のご遺体に対し死後核磁気共鳴画像(MRI)検査を行い、解剖所見と比較検討し、死後コンピュータ断層撮影(CT)だけでは究明できない、頚髄損傷などの死因を死後MRIによって究明できるか否かを検討することを目標としている。
平成29年度は11体の死後MRIを撮影できた。平成28年度と同様、死後CTでは検出しがたい、頚椎・頚髄損傷や、びまん性軸索損傷の事例(ポジティブコントロール)が認められ、またこれらに対して、損傷がない場合のMRI(ネガティブコントロール)事例も蓄積されたことから、死後MRIの有用性を示すデータをさらに蓄積することができた。また、本年度からはあらたに、死後CTでは捉えることが困難な陳旧性脳血管障害(多発微小出血)、頸部圧迫における扁桃腺うっ血像、下垂体病変、脳梗塞、肝内胆管拡張など死因にかかわりうる病変が死後MRIでは評価可能になることを示す知見も得られた。一方で、大動脈解離や、椎骨動脈解離などの血管内病変が、血管が虚脱することによって、死後CTと同様、MRIでも評価困難な場合があることも明らかとなった。
研究協力病院における調査では、平成28年度に引き続きホルマリン固定後脳や血液などの検査を行っている。ホルマリン固定後脳のMRIでは、死体内のMRI信号とは変化するものの、コントラストが保たれており、そのため、本研究の主たる目的である解剖前の死後脳MRIを評価する指標になりうることも判明してきた。
以上をまとめると、本年度は昨年度の研究を継続して行い、昨年度の実績を補完させるデータが集められたとともに、新たな課題が理解されたという結果であった。今年度以降は、それらに新しい課題に対する検討を加え、さらに症例を重ねて評価していく予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

平成29年度は、平成28年度に既に確認されていた死後MRIの有用性を補完させるべく、撮影した11体のご遺体に対して、平成28年度からさらに追加された様々なシークエンスによる撮影を試みた。追加したシークエンスとしては心筋病変や脳病変の量的評価を可能にするため、これまでT2値の評価を行っていたが、本年度より新たにT1値計測シークエンスを追加した。また血管病変を評価するため、Balancedといわれる、血管描出能の高いシークエンスも追加した。また拡散係数の変化を見るため、様々なb値による拡散強調画像が評価可能なIVIMシークエンスを追加した。
その結果として本年度は、既知の検討事項に対する、ポジティブコントロール、ネガティブコントロールがそれぞれ蓄積された。また既述の通り、新たに、扁桃腺のうっ血の程度の評価や、下垂体病変の評価など新しい死後MRIの有用性が見出された。一方で、血管病変に対する死後MRIの欠点も浮き彫りとなりになった。研究協力病院においての死後ホルマリン固定後脳の検討も進んでおり、解剖前の死後MRI脳と対応がみられるという知見も得られてきた。
以上のように、当研究は当初の計画が予定通りに進んでいるだけでなく、シークエンスを追加し、新たな知見が得られるに至っており、実際の想定よりも進展していると評価可能と考えられる。

今後の研究の推進方策

上述の通り、本年度、本研究は当初の想定以上の進捗が見られている。今後も当初の計画通り、事例数を集め、成果をより確定的なものにしていくのが今後の課題である。平成29年度の検討の結果、新たに改善、改良されたMRIシークエンス(既述の通りT1値計測プロトコル、血管描出能を判定するBalancedシークエンスの追加、拡散強調画像における死後変化を調べるためのIVIM解析など)を継続的に撮影し、必要に応じて、修正を加えながら、対象事例を蓄積していく。研究協力病院においても引き続き、固定後臓器MRI撮影、血液サンプル撮影を行っていく。適宜症例数が集まった時点で、各検討課題について、知見をまとめ、学会発表や論文報告を行っていく予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Postmortem angiography revealing traumatic rupture of the intracranial internal carotid artery.2018

    • 著者名/発表者名
      42.Chiba F, Inokuchi G, Makino Y, Torimitsu S, Motomura A, Yamaguchi R, Hashimoto M, Hoshioka Y, Nasgasawa S, Sakuma A, Yajima D, Saito H, Iwase H.
    • 雑誌名

      International Journal of Legal Medicine

      巻: 132 ページ: 589-592

    • DOI

      10.1007/s00414-017-1752-x.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Differences between postmortem CT and autopsy in death investigation of cervical spine injuries2017

    • 著者名/発表者名
      Makino Y, Yokota H, Nakatani E, Yajima D, Inokuchi G, Motomura A, Chiba F, Torimitsu S, Uno T, Iwase H
    • 雑誌名

      Forensic Science International

      巻: 281 ページ: 44-51

    • DOI

      10.1016/j.forsciint.2017.10.029.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Frequency and influencing factors of cardiopulmonary resuscitation-related injuries during implementation of the American Heart Association 2010 Guidelines: a retrospective study based on autopsy and postmortem computed tomography.2017

    • 著者名/発表者名
      Yamaguchi R, Makino Y, Chiba F, Torimitsu S, Yajima D, Inokuchi G, Motomura A, Hashimoto M, Hoshioka Y, Shinozaki T, Iwase H.
    • 雑誌名

      International Journal of Legal Medicine

      巻: 131 ページ: 1655-1663

    • DOI

      10.1007/s00414-017-1673-8.

    • 査読あり
  • [学会発表] 死後画像診断読影の基礎2018

    • 著者名/発表者名
      槇野陽介
    • 学会等名
      第14回日本法医画像勉強会
    • 招待講演
  • [学会発表] Evaluation of cervical spinal injuries by post-mortem MRI with gradient echo sequences.2017

    • 著者名/発表者名
      Makino Y, Kojima M, Yoshida M, Horikoshi T, Mukai H, Inokuchi G, Motmura A, Chiba F, Torimitsu S, Iwase H
    • 学会等名
      6th Congress of the International Society of Forensic Raddiology and Imaging
    • 国際学会
  • [学会発表] Massive fat embolism revealed by postmortem magnetic resonance imaging2017

    • 著者名/発表者名
      Makino Y, Kojima M, Yoshida M, Motomura A, Horikoshi T, Mukai H, Hoshioka Y, Chiba F, Torimitsu S, Uno T, Iwase H.
    • 学会等名
      10th International Symposium on Advances in Legal Medicine (ISALM).
    • 国際学会
  • [学会発表] 解剖前に施行した死後MRIにより, 外傷性軸索損傷が指摘できた1法医解剖例.2017

    • 著者名/発表者名
      槇野陽介, 新井信隆, 星岡佑美, 小島正歳, 吉田真衣子, 堀越琢郎, 向井宏樹, 岩瀬博太郎.
    • 学会等名
      第58回日本神経病理学会総会学術研究会
  • [学会発表] 死後CT及び死後MRIにより評価し得た脂肪塞栓の一剖検例.2017

    • 著者名/発表者名
      槇野陽介, 本村あゆみ, 小島正歳, 吉田真衣子, 堀越琢郎, 向井宏樹, 星岡佑美, 千葉文子, 鳥光優, 岩瀬博太郎.
    • 学会等名
      第101次日本法医学会学術全国集会

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公開日: 2018-12-17  

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