研究課題
当研究は法医解剖前のご遺体に対し、核磁気共鳴画像(MRI)検査を行い、解剖所見と比較検討し、死後コンピュータ断層撮影(CT)だけでは究明できない、頚髄損傷などの死因を死後MRIによって究明できるか否かを検討することを目標としている。平成30年度は10体の死後MRIを撮影できた。死因に関わった心筋梗塞病変のMRI所見と詳細な組織学的検討をはじめて行えたほか、絞扼性イレウスの原因病変、遷延した中毒による脳病変などが死後MRIで、死後CTよりも明瞭に指摘できることが確認され、新たな有用性が確認されたと考えられる。一方で、軽微な頸椎損傷などに対しては死後MRIをもってしても検出しがたいことも見出された。死後変化によるガスと微細な出血による所見が、MRI上は同一に見えることも法医学的検討では問題になることも経験され、これらは今後の課題と考えられた。死後MRIによって死後CTよりも明瞭に検出できたと考えられる軸索損傷、脂肪塞栓の検討につき、論文発表、学会発表などを行った。また、直腸温の低い死体において、脳のMRIにおいてT1強調画像における白質/灰白質コントラストがスピンエコー法とグラディエントエコー法で逆転することを見出し、学会発表などを行った。研究協力病院における調査では、平成29年度に引き続きホルマリン固定後脳、心臓や血液などの検査を行っている。特にMRI室で温度調整がある程度可能になったことから、温度変化を加えた影響について検討を行っている。以上をまとめると、本年度は昨年度の研究を継続して行い、昨年度の実績を補完させるデータが集められたとともに、新たな課題が理解されたという結果であった。また、ある程度蓄積してきた複数の知見を公表できた。今年度も引き続き、症例を重ねて評価していく予定である。
2: おおむね順調に進展している
平成30年度は、昨年度と同程度数のご遺体を、当初予期していなかったような事象が発生することなく、撮影することができた。事例の中には研究計画当初より予定していたが、なかなか撮影できなかった心筋梗塞事例も含まれており、詳細に画像と組織学的検査の比較検討ができた。実績の概要でも記述の通り、本年度撮影できた症例の検討から、死後MRIの有用性、限界両面において新たな知見が得られた。撮影シークエンスも昨年度同様に多数のバラエティに富む内容で継続することができ、様々なシークエンス撮影による比較が可能となり、シークエンスの違いによる死後変化の影響の違いといった点も検討できた。研究協力病院における固定後臓器、血液の撮影も順調で、症例数が蓄積され、新たな検討が可能となってきている。予期せぬ事故などは発生していない。平成30年度はこれら得られた知見について、学会発表や論文発表や論文報告も順調に行えている。以上から、当研究は当初の計画が予定通りに進んでおり、昨年度から開始したようなことも継続して行えており、予期せぬ事象なども発生せず、順調に進展していると評価可能と考えられる。
上述の通り、本年度、本研究はおおむね順調に進捗している。今後も当初の計画通り、事例数を集め、成果をより確定的なものにしていく。新たに見つかった課題などに対しては、その解釈や対応方法について、検討し、必要に応じてシークエンスを増やすなどしながら評価していく予定である。研究協力病院においても引き続き、固定後臓器MRI撮影、血液サンプル撮影を行っていく。適宜症例数が集まった時点で、各検討課題、新しい知見などについて、学会発表や論文報告を行っていく予定である。
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