研究課題/領域番号 |
16H06243
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
倉島 洋介 東京大学, 医科学研究所, 特任准教授 (30729372)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 間葉系細胞 / 炎症性腸疾患 / 線維芽細胞 / 粘膜治癒 |
研究実績の概要 |
炎症性腸疾患の治療には炎症反応の軽減のみならず、粘膜上皮の適切な修復・再生の誘導が必須である。これらの過程、すなわち粘膜における細胞外マトリックスの産生を介した組織修復と上皮細胞の適正な分化・増殖においては、線維芽細胞や筋線維芽細胞をはじめとした腸管間葉系細胞が主体となり粘膜が治癒する。本研究では、粘膜治癒の各過程に働く間葉系細胞群の網羅的機能解析を基盤とし、粘膜治癒機構の全容解明を目指している。研究初年度においては、炎症刺激に伴い誘導される腸管粘膜間葉系細胞の同定とそれら細胞群由来の分泌因子と細胞表面発現分子の探索を行った。粘膜間葉系細胞を細胞表面に発現する分子パターンに基づき数種類の細胞群に細分化し、炎症レベルと相関して増加する細胞群を同定した。さらに、これら細胞を単離し、炎症の急性期慢性期における遺伝子プロファイリングを行った。新しく見出した粘膜修復候補因子については、CRISPRCas9を用いた候補遺伝子の欠損マウスを作製し、解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、粘膜間葉系細胞の網羅的解析を基盤とし、炎症の各ステージに働く間葉系細胞群ならびにその産生因子の同定を目指している。初年度に新しく見出した修復因子の候補遺伝子を欠損するマウスを数種類作製した。現在はこれら欠損マウスを用いた腸炎の感受性や粘膜修復への当該分子群の関与についての検証を進めている。さらに、候補因子の作用機序を明らかにする目的で会合細胞・分子の同定を目指した解析も進めており、間葉系細胞間の相互作用が効率的な組織修復に必須である可能性を見出している。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に作製した遺伝子欠損マウスを用いた解析を中心に、当該分子群の作用機序について明らかにする。さらに、間葉系細胞間のみならず、上皮、免疫、神経といった多群間相互作用の可能性についても視野に入れ、解析系の新たな導入もしくは構築を行う予定である。候補因子が複数であるのと、これらがそれぞれ修復時に異なる因子によって誘導されるというプレリミナリーなデータを得ていることから、これら分子群の解析には粘膜修復機序の全容解明の一助となると期待できる。
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