研究実績の概要 |
我々は成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)において包括的かつ網羅的な遺伝子解析を行うことにより、世界に先駆けてその遺伝子異常の全貌を解明した。次に必要なのは、これらの遺伝子異常の臨床的意義や生物学的意義を解明し、それに基づいてATLの分子病態を明らかにすることである。 昨年度までの解析により、TP53変異、IRF4変異、および、複数のコピー数異常が進行性の病期(急性型・リンパ腫型)と関連があること、IRF4変異が予後不良因子となることを見出いしていた。今年度は、さらに、これらの遺伝子異常が臨床的因子と組み合わせた上で、予後予測に有用であるか評価した。その結果、ATLで広く使用されているJCOG-PI(急性型・リンパ腫型)やLDH高値・Alb低値・BUN高値(慢性型)と合わせても、一部の遺伝子異常は予後と関係があること、特にPD-L1コピー数増加が強力な予後因子であることが明らかになった。この結果は、ATLにおいて、世界で初めて網羅的な解析により、臨床因子と遺伝子異常を組み合わることにより予後予測能が改善することを示したものである(K Kataoka et al, 2018 Blood)。 また、昨年度より、ATLにおいて臨床的に重要と考えられたIRF4変異を持つ条件的ノックインマウスを作成中であり、今年度はVav-creマウス・Mx-creマウスなどの造血系でCreを発現させるマウスと交配させて、造血系でIrf4変異の意義を解析するためのマウスを得ることが出来た。現在、その変異アレルの発現を確認できた段階であり、今後、その表現型を解析予定である。
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