研究実績の概要 |
本研究では、脳内で選択的スプライシングと有意に関連する量的形質座位(splicing quantitative trait loci: sQTL)を網羅的に同定し、そのリソースを作成した。さらに、ゲノムワイド関連解析(genome-wide association study: GWAS)で統合失調症等と関連を認めた座位では有意にsQTLが多いこと、統合失調症とゲノムワイドな有意水準で関連する108の座位のうち4つで、関連SNPが脳sQTLとして働いていることを明らかにした(Takata et al., Nature Communications 2017)。上述の結果の一部については、他グループからの独立した研究でも同様の所見が確認された。また、自閉スペクトラム症、発達性及びてんかん性脳症を対象とした大規模バイオインフォマティクス解析を、選択的スプライシングに影響を及ぼしうるエクソン領域の変異についての検討を含めて行い、その結果を報告した(Takata et al., Cell Reports 2018、Takata et al., Nature Communications 2019)。さらに、RNA-seqデータとゲノム配列データを複合的に解析することによって、選択的スプライシングに影響を及ぼすNEBの深部イントロン変異を、ネマリンミオパチーの新規原因変異として同定した(Hamanaka et al., Genetics in Medicine 2019)。統合失調症群と健常群で選択的スプラインイベントを比較した解析では、多重検定の補正を超えて有意な差を認めるイベントは同定されなかった。また、精神神経疾患リスクに関与する、選択的スプライシング等に影響を及ぼす調節領域の変異と、タンパク質配列を変化させる変異の組み合わせについての解析を行うためのデータ整備を行った。
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